虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

銃の問い詰め


「おい、何してんだよお前」

「……ふぁんのほふぉふぁなんのことだ?」

 いつも通り、昼休みの自由時間。
 瑠璃の作ってくれた愛妻弁当を頬張りながら、拓真の発言に応える。

「銃だよ、銃。お前、見せつけただろ」

「仕方ないだろ、ダメージ固定の武器なんてあれぐらいしかないんだからよ」

「そういうことじゃねぇよ! お前が出した直後に生産ギルドで情報が開示されるようになったんだぞ! お前、掲示板でなんて呼ばれてるか知ってるか?」

 ずいぶんと興奮しているようだ。
 おそらく銃関係の情報収集の仕事が増えたことで、あっちでもこっちでもてんやわんやになってしまったからだろう。

「──『運営の回し者』だよ! お前が名前とかステータスを視えない状態にして、何かやらかすごとに新しいアイテムや武具が増えてんだからそりゃそうもなるだろ!」

「運営の回し者って……もしそうだったとして、具体的に何をやるんだろうな」

「知らねぇよ!」

 ここまで叫ぶことでだいぶ落ち着いたようで……一息吐くと、拓真は真剣な瞳で語りかけてくる。

「ただ、やりすぎるのは止めとけよ」

「分かってるよ。瑠璃よりはやらかさないと思うが、アウトの基準が違うからな」

「おうおう、止めとけ止めとけ。あれは絶対に真似しちゃダメなスタイルだ」

 何をしても好いことに転じ、どんな状況でも優位に覆す──才能。
 それを持つルリだからこそ、何をしても上手くいっている。

 そんな力は俺に存在しない。
 有ったら『超越者』に遭遇することなんて無かっただろうし、そもそも願った結果が異なっていただろう。

「……で、何の話だっけ?」

「銃だ」

「ああ、それか。実はあの娘たち、マイの友達だったんだよ」

「なるほど……それならお前があんなことにも納得がいく。娘の友人だから、なのか」

 当たり前のことを言う拓真。
 コイツもコイツで、俺が子供たちをほんの少し過保護な感情で見守っていることを理解している。

 もう子供たちは俺に頼られるほど弱くはないが、それでも親は無条件に子供を庇いたくなる本能が宿っているのだ。
 どうしようもないし、どうにかしようとは思っていない。

「俺、特級会員になったんだよ」

「知ってる。さすが社会人、とりあえずは第一の関門を突破したな」

「契約以外にもあるのかよ」

「当然だろ。どんな手を使ってでも、自分の利益を手に入れる……それが商人ってもんだからよ」

 いつも通り腹が立つ、しかしどうにも憎めない笑みを浮かべる拓真。
 ……恩は返しておきたいし、できるだけ調整した情報を売っておこうか。


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