虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

光線銃 前篇


 気づいたのは、立ち見から救出に切り替えてあの場所へ向かっていた時だ。
 なんだか見覚えがある顔立ちだと思っていたら、マイの写真にいっしょに写っていた友達だったということに気づいた。

 それからは、もう手段を選ばずに救うことになって──光線銃などという、今の文明を軽く超えた武器で倒したわけだ。

「──君、さっき騒動を起こしたかい?」

「……なんのことでしょうか?」

「まあ、構わないさ。たとえ誰だったんだろうと、大切なのは結果だけ。そう、外で広められてしまった技術についてが問題なんだ」

「ああ、そういうことですか」

 要するに、生産ギルドとして未知の技術というのは問題なわけだ。
 圧倒的な存在──『超越者』のみが扱うのは仕方がないとしても、一般に公開されてしまったものはどうにか管理したいのだろう。

「それで、私は何を?」

「作れるかな、光を弾丸にした銃を?」

「可能かどうか、と訊かれれば……答えは可能です。ただし、人々が等しく使える物となると……少々難しいですね」

 なぜってもちろん、材料が問題である。
 さすがの:DIY:様でも、ただの鉄鉱石だけで光の銃を生みだすことは不可能だ。
 それなりに高い材料を使うことで、どうにか創り上げられる品なのだから。

「ああ、なるほど……これが特級会員に組み込んだ理由ですか」

「わざと残していた君に、それを言われると少々痛いなぁ」

「せめてそれくらい、恩義を払わなければいけないでしょう。やれる限りのことは、やらせてもらいますよ」

「よかった。どのギルドもあの武器の可能性に気づいているんだ、それを知らないと思われれば不味かったんだよ」

 魔法の銃が光属性の魔力を撃ちだす、というのであればそれだけだっただろう。

 だが、光線銃は魔力を出さなかった。
 それでも威力があり、対象を殺しうる……そして弾が尽きることは無い。

「実際のところ、その技術について生産ギルドはどこまで掴んでいるんですか?」

「魔力に頼らず、自然現象を武器や防具に転ずる技術は研究していたよ。けど、できずにいたから中止になったんだ」

「なるほど……ですが、これからはそうはならないと思いますよ」

「たしかに、星渡りの民が居るからね。彼らの一部はぼくたちでも知り得ない技術をたくさん知っているからね。特に魔力を用いない技術を無数に」

 少なくとも、地球において魔力は存在しない……あったとしても、俺たち凡人には気づくことができないのだ。
 そういった者たちが多いため、当然ながら技術もその方向性となる。

 ──光線銃か、どうにか大量生産体制を作らないとな。


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