虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天翔靴
肉を食うだけ食って、『騎士王』はそのまま去っていった……なんてこともなかったので、いつものように激しい抗争の末にどうにか追いだした。
いつまでも居られると、面倒なんだよ。
「ショウとマイ……どこだろうか?」
二人はルリと違って冒険をしているため、居場所が不定だ。
前に龍の国と雪の国と言っていた二人なんだが、どちらもまだ辿り着けない。
雪の国、というのはどうやら寒防都市のことではないらしい……冒険世界には、まだまだいろいろな秘密が隠されているようだな。
「というか、あれからもう時間が経ってるから、たとえ寒防都市だったとしてもすぐに去るか……あそこに守護獣とかいないし」
居たのであれば、あのような環境にはなっていないだろう。
風兎が居なくなり、失われた森が再び自力で再生できなかったことから分かるように、守護獣は担当する地以外で力を発揮するためには──特別な儀式が必要になるのだ。
だからこそ、社を立てたことに風兎は驚いていたのだ……風兎は文字通りすべてを捨ててでも、森の民たちを守ろうとしてくれるわけだな。
「次はどこへ……ん?」
そんなことを考えながらふらふらと歩いていると、遠くに人だかりができている場所を見つけた。
やることもなく、暇でしかなかったので野次馬をしにいこうと思い……移動を始める。
「『光学迷彩』──そして『天翔靴』起動」
光が周りの空気と同化し、俺の姿を見つけづらくする。
それと同時に、履いていた靴が作動音を鳴らすと……俺が不自然な形で宙に止めていた足が空気を掴むようになった。
兎耳の【獣王】が空を蹴って飛ぶ姿を見て開発した魔道具──『天翔靴』。
セットした風と空間属性の魔石が機能し、一時的に足の踏み場を宙に生みだす。
どちらか一つでは燃費の悪い技術だが、二つの魔石を同時に組み込むことでその問題を解決した魔道具である。
「さてさて、何をしているんだか……」
街には結界が構築されているので、その天井に当たらないようにこそこそと動く。
「まあ、俺の出番はないんだろうけど……」
軟着地した建物の屋上。
双眼鏡代わりにサングラスを付けて、何が起きているのかを遠くから眺める。
映し出されたのは、初心者っぽい恰好をした美少女たちがいかにも怪しそうな男たちに絡まれている様子だった。
やじ馬たちはその絡み、またそのあと何が起きるか、美少女たちを見たくてそこに集っているようだ。
「誰か来ないかなー、誰か……誰か──」
時間だけが過ぎていく。
やじ馬たちは、きっと誰かが救うと、自分たちでなんとかすると思い周りの様子と彼女たちを窺うだけだった。
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