虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
坑道拡張
N11
要領としては仙人たちの里である『仙郷』の地下迷宮──『通天の晶洞』で行った穴掘りと同じ感じだ。
洞窟を自身の支配領域として定義することで、この場を迷宮に作り変えた。
迷宮とは、尽きることのない無限の富が確約された理想郷。
どれだけ倒しても魔物は現れ、どれだけ採取しようとアイテムは再び生みだされる。
……というのはあくまでおまけ、俺がこの場所を自分の支配場所とした理由。
「それは──ショートカットのためだ」
《N11への遷移、完了しました》
「予想通りだったか……さすがだな」
《すべてはそれらの計画を可能にした、旦那様の功績でございます》
坑道は突き抜け、次のフィールドにまで届くように改造された。
リソースならば別世界から持ち込めた、さすがは星のエネルギーとも呼べよう。
「状況の報告を」
《畏まりました。『侵雪』はN11だけでなくN11E1やN11W1にも侵蝕しております。そのため、N11の解放には三区画分の魔物を処理する必要がございます》
「……なんて面倒な仕様だ」
《重ねて申し上げますと、雲の状況から鑑みたところ──続くN12やN13も跨っての侵蝕となっている可能性が高いと思われます》
つまり、俺のやったことから触発されて動き出した者たちは、より多くの場所で戦わねばならないと……合掌。
「そっちはいい。プランBはどうだ?」
《第二坑道、第三坑道の形成は順調です。十区画を経ているということもあり、採掘できる鉱石の純度もそれなりにございますので》
「地下に魔物は?」
《おりません。迷宮化の影響で、たとえ出現しても支配下に置くことが可能となります》
マジで便利な迷宮化機能。
先に住んでいた魔物ならともかく、迷宮化以降に自然出現した魔物はほとんど支配下におけるそうだ。
……無理な場合は、かなり強いらしい。
「いちおう訊いておくが、プランAは?」
《すでにこの場所がN12となります。さらに伸ばすことも可能でしょう》
「最大でどれくらいだ?」
《貫通も可能かと。しかし、その場合アイプスルの運営に影響が及ぶかと》
それは困る。
わざわざ辺境の坑道一本のために、星に住む者たちを苦しませたくはない。
「あくまで余剰分だけでいい。プランBを優先して事を進めてくれ」
《畏まりました》
そういって『SEBAS』は、ドローンによる支配領域の拡大を行っていく。
なんでも自動に頼るとダメなんだ……ってこれ、そういえば機械も自動だったな。
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