虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
VS侵雪獅子
これまでの魔物とは、明らかに異なる速度で俺を攻め立てる侵雪獅子。
大自然の猛威、という言葉を体現しているかのように荒々しい攻撃の数々は俺の体をズタボロに──してすぐに死に戻らせる。
そのため体はいつでも新品、いい意味でも悪い意味でも戦いは続いていた。
『グァオオオオオオオオオオオオォ!』
「まあ、そうくるよな」
最近はもうバレてきている『生者』の力。
死ななければ発動できない権能を封じるには、殺さずに殺す必要がある──つまり、死ねない環境に封じ込めればよい。
咆哮を上げると体に纏っていた吹雪が、魔物の形を成さずに俺に迫ってきた。
それらは結界にくっつくと、少しずつ体を覆っていこうとする。
「甘いな──『転位装置』起動」
《畏まりました。『転位装置』──起動》
視界はすでに雪で覆われているので、座標指定ですぐに使える転位を使用する。
言うなれば、場所の入れ替えだ。
「先手必勝──『闘仙』の地裂脚!」
仙丹を魔道具を通じて練り上げ、脚に籠めて地面に叩き付ける。
強化した脚力は雪をも砕き、大地を震わせ引き裂くまでの威力を発揮した。
『グロォオオオオオオン!?』
「もういっちょ──天閃腕!」
雪を砕いて確保した地面から衝撃を吸収、それを片腕に注ぎ込むと水平に薙ぐ。
パカッと割れる大気、一瞬だけ真空となった空間が生まれ雪も制御を失い霧散する。
「けど……まだ粘るか」
『ガォオオオオオオオオオオオオオオ!!』
怒ったのか、雪をただ体の外に纏うのではなく、鎧など体に装備するかのような形状に変えてこちらを睨んでくる。
誰かがライオンの下に辿り着き、装備の優位性でも宣伝したのだろうか?
「なら──『拳王』。そして称号『闘匠』」
戦闘プログラムを格闘重視に切り替えたうえ、さらに物理特化にしておく。
ちなみに、『生者』にはサブ称号の枠を用意する力があったので、死に戻りしたら敗北という背水の陣に陥ったつもりはない。
「気分は爽快、パンチングゲームじゃぁ!」
『グォエオオォオオン!?』
「防御に特化したつもりか! 残念、これは防御無視でダメージ向上じゃボケェ!」
ちょっと会社での鬱憤が溜まっていたみたいで、声も高々にこの場でそれらを発散しようと荒れ狂う。
強引に肉体の限界を超えた速度で放たれる拳の連打は、自他ともに破壊していく凶悪な威力を発揮していく。
「だいたい──が、────で──とか面倒臭いんだよ!」
おっと、会社の揉め事を社外に漏らすわけにはいかないな。
もしそんなときには掻き消してもらえるように、予め『SEBAS』に頼んでおいて正解だった。
──ということで、思う存分はっちゃけることができる。
どれだけ耐えてくれるかな、侵雪獅子。
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