虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

反射光



 散らばったドロップアイテムを回収し、再び歩を進める俺だったが──

「うわっ、もう塞がり始めてる……さすが、ファンタジー世界の自然現象だな」

《それでも回復に時間を要したのは、このエリアの魔物を討伐したからでしょう。本来であれば、即座に修復されるとのことです》

「魔法で天気を操ることもできないってことか。雪と太陽以外の天候条件がある魔法は、使えないと考えた方が良さそうだな」

 先ほど使った『ソルロン』。
 これは溜め込んだ太陽の光を使っているだけなので、どこでも使用可能だ。
 だが、それ以外となると……わざわざその天気だけじゃなくても問題ないんだよな。

「しかし、急に魔物が集まってくるな」

《先ほどの現象に危険を感じ取ったのでしょう。『侵雪』側も、旦那様の排除を可及的速やかに行いたいのかと》

「そりゃあなんとも、嬉しいこって」

 ガンガンと鳴り響く警鐘。
 それは、俺の死がより強大な存在によって引き起こされるものだと伝えてくる。

 しかし、予想していた範囲内の音量だ……『騎士王』レベルだと、鼓膜が破けるんじゃないかと思うぐらいうるさいし。

「『SEBAS』、『ソルロン』はあと何発打てる?」

《太陽光線の凝縮行程に膨大な時間を要しております。先ほど使用した十基は使用不可。補助サブ主機メインを交代させればあと一発かと》

「充分だ。一度に全部、できるように準備してくれ」

《畏まりました》

 魔物たちが物凄い勢いで近づいてくる。
 俺というこの場を一瞬で変えることができる、この場でもっとも弱き者……だからこそ『侵雪』は、逃げるてったいではなく殺すげいげきを選んだ。

 うん、俺も『騎士王』相手に真正面から戦おうとは思わないしな。

「その油断こそがお前らの敗因ってか──始めろ、『SEBAS』」

《演算処理完了。ミラードローンの配置──完了。太陽光線凝縮砲──『ソルロン』の準備が整いました》

「それじゃあ改めて──撃てー!」

《仰せのままに、旦那様──照射開始》

 俺の周りに配置された銀色のドローン。
 再び雲を突き抜けるように放たれた光の柱は、やがてドローンと接触し──弾ける。

『!?』

 息を呑むような動揺が魔物に起きた。
 先ほどの光を見て、すでに恐怖を覚えていたのかもしれない。

 だが、こちらとて容赦はしない。
 弾けた光はまた別のドローンに当たり、さらに分裂して魔物たちの下へ向かう。
 威力が弱まることはない、そうならないように演算を『SEBAS』が行った。

 ──そして、光は地上に注がれる。


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