虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
雪目薬
真っ白な世界、その評する他ない。
光が映えて白銀、そんな夢のある感想などそこではいっさい抱くことはないだろう。
雪が狂うように吹き荒れ、容赦なく人体にその冷たさを押しつけてくる。
合間など存在せず、寒いという感覚すら感じなくなっていく……結界の温度調整が起動するからな。
「普段より、魔石の消費速度が速いな……それだけ寒いってことか」
《外界の気温はマイナス30度、地球では極寒と呼ばれ始める温度です》
「マジか……」
日本の、それも暖かい所に住んでいるのでその寒さは分からない。
だが、絶対に作業服一丁では死んでしまうような場所だってのは理解している。
試しに水を用意して、ジョボジョボと零してみると──すぐに凍った。
いや、なんかこう速すぎない? もうちょい、時間とか……と思ったが、あくまでここはゲームの中だと思って考えるのを止める。
「視界も予想通り最悪、一寸先は闇ならぬ雪状態。後ろの門はまだ見えているけど、一度離れたらスキルでもないと分からないんじゃないか?」
《そのような例はすでにいくつも。帰還する場所を失い、自殺にて記録地点へ戻った者もいたようです》
「そりゃそうだよな……ハァ。千里眼でも無いと、乗り切るのは無理だろう──ですが、そんな貴方に朗報です!」
そういう場所なのか、なぜか[マップ]も使えないからな。
途中まではナニカを意識したように悩ましげに……ある場所を区切りに、どこかの社長のように声を高くして張り上げる。
「私たち商会が自慢を持ってご紹介するこの一品──『雪目薬』!」
ラベルにもそう書かれた薬品を、ポケットから取りだし目の前に突きだす。
「これがあれば、どんなに苛酷な雪国だろうと大丈夫! 視覚は完全に確保されます」
《凄いですね!》
相槌はそのノリに合わせ、女性スタッフらしく(声ごと)なっている『SEBAS』。
的確に説明を補足し、話を進める。
《この『雪目薬』があれば、あの『侵雪』の中でも遠くが見れるんですか?》
「その通り! 私どもが、責任を取ってお約束させていただきましょう! 使用方法は簡単、目薬と同じように差すだけ!」
《えー、たったそれだけで!?》
というか、『SEBAS』の声が本物と同じ(ぐらい上手い、)なので俺の社長演技にも、よりいっそう気合が入る。
「それだけなんです。今ならこの『雪目薬』に、こちらの一定時間が経ち効果が切れそうになったら自動で目薬を補填してくれる特殊なゴーグルをセットに付けて──なんと、一万九千八百L!」
《すぐに買わないと!》
「お求めはこちら、0120──」
「なあ、何やってるんだ?」
さすがに叫びすぎたのか、後ろの門からチラリと門番が顔を出す。
さすがに防音結界を街で展開するわけにもいかず、使うのを忘れていた。
「…………」
「…………」
俺はスッと顔を伏せ、他に用意していたアイテムを装備して前に移動を始める。
門番も何事もなかったかのように、扉を閉めた──恥ずかしい!
以降、わざわざ通販のように耐寒アイテムの説明をすることは……無くなってはいないものの、周りを確認してからになった。
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コメント
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コメントを書くくあ
て言うか目薬出した瞬間凍るんじゃない?