虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
開門許可
「出たいだと……本当に大丈夫なのか?」
「ええ、ご覧の通りかと」
「と、言われてもだな……俺には心配しかないんだが……」
門番は本当に『侵雪』を乗り越えるだけの力があるのか、チェックしてから出ないとその門を開けてはくれない。
なぜなら、雪の犠牲者が魔物になってしまうケースが発生したからだ。
曰く、『スノーマン』なる雪に包まれた特殊な魔物になるんだとか。
その強さは一定以上で、弱者は強く強者はより強い魔物となったらしい。
そんなこともあってか、門番は装備や持っていくアイテム……何よりその人の強さが足りていないとなかなか通してくれないのだ。
いくら聖剣や神剣を持っていようと、担い手のレベルが1では……通してもらえない。
「あんた、行商人だろ? せめて護衛の一人や二人、雇ってねぇのか?」
「ああ、それなら……これです」
「……人形か?」
「そういう効果があるんですよ」
北の偏屈な場所まで来る商人の中には、できるだけ荷物を詰め込もうと空間属性の魔道具でアイテムを運ぶ者が居るため、そこまで手ぶらで来る者を門番は疑わない。
ポケットから人形を取りだし、俺はそれを地面に配置した。
「起動」
「うおっ! ……こりゃ凄いな」
「迷宮より発掘された品です。これが居るので、私には人間の護衛が不要なのです」
「なるほどな……」
ドローンが常に空で待機しているので、もしもの事態が起きればピチュン(比喩)することもできる。
だが、目に見える形で安全を保障するために、膨らんだ人形に武器を構えさせた。
「Aランクの冒険者程度の働きをしてくれると、私は自負しています。実際、いつもお世話になっていますし……」
「そ、そうなのか?」
「はい。ご安心ください、耐寒の対策はバッチリしてあります。戦闘に関しても、彼らが要れば問題ありません」
ちなみにAランクの冒険者とは、集団であればドラゴンも討伐できるらしい。
ショウとマイはSランク、単独で討伐できるとのことだが……必要ない情報だな。
この先で求められるのは、少なくともB以上──徒党を組んでワイバーンを討伐できるような強さ。
そこでAランクだと言われれば……門番も諦めざるを得ない。
「絶対に、無茶だけはするんじゃないぞ。いくらAランク相当の実力があろうと、魔物に返り討ちに遭った事例は多いんだ」
「ここに刻んでおきます」
「ああ、そうしてくれ──侵入を許可する」
人が一人通るサイズの小さな扉を開き、門番が中を進ませてくれる。
最低限の開門でないと、一瞬の隙に魔物が侵入してくる可能性があるらしい。
そして、俺は雪の世界に進み出た。
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