虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
複製利用
寒防都市の中は、木でできた家が多い。
そういえば周りに針葉樹も生えていたし、おそらく石よりも樹木の方がここいら一帯にはあるのだろう。
「装備は念入りだな」
全員が南極に向かうような重装備で、この街では生活を行っているようだ。
行く先々の人々は、モコモコというか毛達磨のような温かな格好に身を包んでいる。
「『SEBAS』、あの素材って……」
《北のエリアで取れるのでしょう。『侵雪』によって、ここでの需要と供給が釣り合わずにいるこの状況です。どれだけ防寒性の高い装備があっても足りないのかと》
「自力で採ってこないと、やっぱり難しいってことだよな……」
お金はあるし、そもそも寒さ対策は必要ないから構わないと言えば構わない。
だが、そこに冒険『らしさ』が欠けてしまうのもまた事実。
自分で倒した魔物の毛皮で、温かなコートか敷物を作る……子供の頃に読んだマンガにもよるが、そういう理想を抱かずにはいられないのではないのだろうか?
「当たって砕けろで一度行きたいが、それでもこの街のルールに則って身支度をしておこうか。『SEBAS』、とりあえず生産ギルドにおこうか」
《畏まりました──目的地である生産ギルドへのルート案内を開始します》
「頼んだぞ」
◆ □ ◆ □ ◆
冒険者ギルドよりも、その規模が小さいと『SEBAS』が教えてくれた。
だが、衣服やアイテム作成のためには必ず生産ギルドの技術力が必要となる。
──そのため、ちゃんとあった。
「欲しい物も買えたし、これでいいかな?」
《はい。必需品と呼ばれた品は、すべて購入し終わりました。また、作成可能なようにレシピの作成も》
「まあ、複製すればいいんだけどさ……様式美って大切だよな」
暗躍街で手に入れた複製の神代魔道具。
対価となる魔力を支払えば、どんな物でもコピーすることができる超激レアアイテム。
それを使えば、一度手に入れた物は何度でも使えるが……ロマンが足りていない。
「ゲームなんだから、そう感じないときだけ使えばいいさ」
《と、仰りますと?》
「基本、家族のためだな。書類をコピーしておいて、って言われた時と同じ感覚でアイテムを複製してしまいそうだ」
まあ、ゲームにおいてアイテム複製バグは昔ならばよくあったことだ。
ショウやマイはともかく、ルリなら有効的な使い方を考えてくれるかもな。
「実際、人形の複製ぐらいにしか使ってないのが現状だし」
もちろん、それは俺の場合だ。
普段は『SEBAS』が何かをコピーしているので、『SEBAS』の場合はそれを活用していると言っても過言ではない。
閑話休題
そんなこんなで、すでに街の北門前だ。
閉ざされた門の前で、まずは手続きを行わねばならない──さて、誤魔化さないとな。
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