虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
寒防都市
「十区画目には国があるのか?」
《すべてではないでしょう。ですが、合計値的にであればそうである可能性が高いかと》
「たしか、あの帝国も東の十区画目……東にある……うっ、頭が……」
今なお、狙われているという恐怖が体に染み付いてしまっていた。
そのため、ショウやマイが東にプレイヤーが建てたという街に居ても、行くことができずにいる。
「と、とにかく行ってみよう……たとえ先に見えるのが、吹雪いている光景でも」
ある意味、興味深い光景だ。
目に見える形で、視界に入る国よりも奥が吹雪が起きている。
それほどまでに、強力な吹雪……だが一線があるかのように街の前で停まっていた。
「あの先にドローンは飛ばせるか?」
《耐寒用のカスタマイズが必要ですね。数時間程度であれば、今のままでも大丈夫でしょうが、数日ともなれば……》
「分かった。とりあえず、街の上から確認できる範囲の観測を。それと、知っていそうな者から聞き取り調査をしてくれ」
調べてほしいことを、『SEBAS』に伝えておく。
あと、どうせ奥まで行けば『超越者』の一人や二人は居るんだろうな……人が住めないような魔境に、人外のような存在が居るのは王道だし。
◆ □ ◆ □ ◆
「ようこそ──寒防都市『ブード』へ!」
「寒防都市、とはいったい……」
「おや、ご存じなくこちらへ?」
「ええ、どこへでも向かう行商人なもので」
ギルドカードは提示済み、なかなか使っていないが俺はいちおう行商人である。
「では、ご説明しましょう……このような場所に来る者も少なく、私も暇ですし」
「そんな不幸に、今は感謝しましょう」
「まずは街に来る前から見えましたか? あの吹雪は」
「ええ、見えましたね」
明らかに雲の色が変わっており、激しく雪が吹いていれば気づく。
「あれは『侵雪』と呼ばれる現象でして……かつては、もっと北で観測されていました」
「……それが、ここまで来たと」
「はい。雪の中に潜む魔物と雪の範囲が連動しており、それらを処理しなければより南に雪が迫ってきます」
なんでそんなシステムが……とも思うものの、レイドイベントがそんな感じで発生するオンゲーがあったことを思いだす。
一定量の魔物が期間内に処理されないと、強力なレイドボスが生まれるのだ。
それの街崩壊が連動している版なのだと、俺は認識しておく。
しっかりと狩りをすれば、街は守れるうえに新たな場所の開拓までできるのだ。
「かつて国が在った場所、そこまで道を切り開いた者にはその国の王となる権利が与えられています。これは『侵雪』が現象として各国に認定されて以降の盟約でもあります。貴方も頑張ってください」
「行商人ですので、そんな方々のサポートができるように励みたいですね」
「そうでしたね。話している内に忘れてしまいました」
まあ、そんなこんなで俺は寒防都市に入場するのだった。
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