虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
もしもの世界
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≪S5W4を開放しました≫
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シンプルなテキストが表示される。
どうやらここは、ソロでの討伐も終わっている場所らしい。
いや、別に良いんだけど……何もないというのも新鮮だな。
「というか、『解放』じゃなくて『開放』になるみたいだな。まあ、たしかに間違ってはいないんだけど」
──ダジャレっぽいよな、本当。
◆ □ ◆ □ ◆
N10
上に登ったせいか、そこは下よりも寒い。
もちろん、結界を展開しているので実際にそういった感覚は無かった。
ただ、格好を少し変えた……作業服ではなく、大量にポケットが付いているコートに。
「もっとも進んでるプレイヤーって、いったいどこまで行ってるんだろうな」
俺も巻き込まれイベントで飛んだりしているが、それでも自分の実力でもっと奥を攻略している猛者もいるとのこと。
彼らはより高い戦闘力を持ち、誰も見たことのない新天地を旅する。
《攻略が進めば進むほど、また運営が干渉を行うことで区画は無限に増えます。また、旦那様の確認したように、世界は冒険世界とアイプスルだけではございません》
「妖界とか冥界とかか?」
《あれらは異層の世界。地球であれば繋がることのない空想とも呼べる場所が、魔力の理によって接続されているのです》
「そうか……なら、箱庭はどうだ?」
あくまで実験の場所、という意味合いが強かった気がする原始世界。
そこには、冒険世界ではありえない妖精種だけが使える木魔法を行使する普人族が存在している。
《あれは歩むべきだった道の一つ、旦那様の分かるたとえを挙げれば──『IFルート』というものでしょうか?》
「もしもの世界、ということか?」
《人が原始の世界に生きた時、どのような適性を発揮するのか……その結果は、妖精種にしか使えぬ力を覚醒したということです》
「……容姿は変わらないのにな」
俺たち哺乳類の祖先は、生き延びるために小さくなっていた時期がある。
妖精種になるわけでもなく、普人は普人として他種族の力を手に入れた。
《普人はもっとも力を持たぬ代わりに、その執念深さや思念の強さが種族一です。ベースとしては、旦那様たち地球人が使われているとのことです》
「……ちなみに、その情報は?」
《規制される前、女性スタッフがそうだと記していました》
「ああ、やっぱりなのね」
──なんだか機密情報って、そういう場所から漏れるんだなと思う。
参考にはしているんだが……緩い会社なのかもと心配してしまった。
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