虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

排除用魔物



「あれれー、おかしいぞー?」

 何がか、と言わずとも分かってもらえるだろうか?
 壁歩きで移動していた俺だが、一定の高さまで登った途端に魔物に襲われ始める。

 最初はそれでも、ただエンカウントしただけだと思っていた。
 しかし、その頻度があまり高かったためさすがに察する。

「──あっ、排除しに来たな」

 ゲームでの王道、意にそぐわぬ存在をその場から追いだすシステムだ。
 この場に圧倒的な暴力を用意し、二度とそういったことができないように心の底から恐怖を叩きこむつもりなのだろう。

「空を飛んでりゃあ、たしかに自在に体が動かせるはずだからな。だからって、ここまで群れで襲わなくてもいいと思うんだが……」

《目標捕捉完了。その数二十、ただしすべてが上位種でございます》

「よし、やるしかないか」

 そのすべてが空を飛ぶ魔物たち。
 いくら排除するプレイヤーが空を飛べるとはいえ、長時間のフライトには対応できないだろうし……なるほど、そうくるか。

「ただ、残念だったな。俺は重力に逆らっているだけで別に消費なんかしていない。だから──『SEBAS』!」

《空間座標──入力。門──展開。ドローンの転送を開始します》

 現れる無数のドローンたちは、飛んできた魔物たちに向けて銃口を向ける。
 すぐに咆えて対応を始めるが、初撃を譲られた分こちらの方が有利だ。

「俺にも一機、乗れるヤツ!」

《重力発生ドローンを転送開始──完了》

「サンキュー!」

 壁を蹴ってサマーソルト……着地に少々失敗はあったが、ドローンの方で一瞬重力を調整してくれたので乗ることに成功する。

 そして、そのまま魔物たちの下へ向かう。
 手には銃を握り締め、引き金を引く。

『グギャァアアアァ!』

「回収班!」

《すでに》

「ならばよし」

 本来であれば罰ゲームに近いこのシステムも、逆手に取ればレアアイテムの狩場だ。
 ただし、最終的にはどうしようもないと無視されるのが普通らしい。

「──少なくとも、俺は例外だが」

 確かに殺してはいるが、ログ上では俺もまた何度も殺されているのだ。
 イーブンよりもさらに悪い、捨て身の戦法でどうにか倒しているといった評価を向こうさんもしているだろう。

「お代わりは一定時間経過後に、まだその行動を取る者が居れば現れる……そのまま撃ち続けろ!」

《畏まりました》

 銃弾の雨が降り注ぎ、生きとし生きる物すべてが地に墜ちようとする。
 途中でそれらすべてを回収し、その結果報告をログで確認。

「……よし、二回戦に行くぞ!」

 欲しかったモノが一定量を達していなかったなら、もう一周ってのは定番だよな?


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