虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
魔王城再訪 中篇
「侵略者か……」
「人族との同盟をしてください、と言っても無駄でしょうからいちおう報告を。そちらもそちらで把握はしていたと思いますが……」
「当然であるな。我らはこれまで人族に敵対しながら、未だに生き延びているのだぞ。情報とは見えざる武力とも言えよう」
こちらも『SEBAS』という、情報戦に長けた存在が居るからそれは分かる。
機械や特殊な魔法生物──つまりゴーレムなどを使ってこちらは調べているが、魔物にはそれ以上に情報収集が上手い者が居た。
「それで、侵略者についてどう思います?」
「邪魔な異物だな。加えて言えば、一部の地域では魔族と侵略者を同一視する。そして、それをすべて魔族の悪事として上に報告しているぐらいだ」
「悪役も大変なんですね。とはいえ、侵略者に関してはどうしようもないでしょうし……【魔王】様、侵略者に関して対策などは?」
「普通に排除しているぞ。有効的に使えるものがあればよかったが……本当に使えぬ。まさに邪魔物だ」
なんでも、侵略者を別の場所に誘導して人族の国を攻めてようとしたらしい……文末で分かると思うが、これは失敗した。
特定の場所から侵略者たちは動かず、この大陸で生まれた奴らは、人族の大陸まで輸送できなかったとのこと。
まあ、こっちの世界に現れるときの捻じれた空間、アレに設定されている座標に問題があるのだろう。
わざわざ動かすのは、その地域一帯の侵略が完了してからだな。
「話を変えよう。我が友よ、カルルは上手くやっているのか?」
「さっき教えてくれたではないですか? 彼女は楽しくやっていますよ」
「言わされているかもしれないだろう……あれを聞いて、そうは思わなかったがな」
「なら、それを信じてください」
それ以上は語らない。
俺が言うことでもないし、何よりカルルが伝えたことだ。
余計なことを言って、違いから何かを予測されても困るしな。
「では、私も話題を変えましょう。私の同類に、面白い者は居ましたか?」
「ふむ、つまり休人ないし星渡りの民についてか……ああ、いるぞ」
「もう目を付けられているヤツがいるのですか。ずいぶんと奇特な方たちです」
「星の剣を振るう少年、聖獣を従える少女、教祖と崇められる女性などだな」
物凄く聞き覚えがある肩書きだった。
もう少し詳細な話を確認するが、やはりうちの者たちのことである。
「もちろん、我が友がもっとも興味を抱く者ではあるがな」
「……ははっ、それはありがたい限りです」
「では、そろそろ本題といこうか。カルルの件もあるだろうが、他にもあるのだろう?」
「はい、簡単な話ですよ」
さて、綺麗に終われるといいんだが。
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