虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

檻の中



 なかなかに居心地がよかった。
 さすがルリの管理する施設、何から何までサービスが行き届いているというか……。

「すみません、お代わりを一杯」

「──ふざけているのか!?」

 飲んでいた紅茶のカップを檻の中から出すと、先ほど俺を捕縛した女騎士が怒鳴る。
 やれやれ、こちらは当然の権利を主張しただけなんだが……冷たいな。

「そうだ、ホットで頼む」

「知るか!」

「どうも……おお、温かい」

 怒っているが、それでもしっかりと紅茶は温めてくれていた。
 まあ、魔道具でどちらかを選ぶだけだからいちおう誰でもできるんだけどな。

「しかし、私はいつになったら解放されるのですかね……」

「貴様がただの盗人や密偵であれば、それなりにあがなえば許されただろう。だが、貴様はこともあろうにあの教祖様の紋章を偽装したのだ! そう簡単に出られると思うなよ」

「なるほど、手厳しい物です」

 ちなみに捕らえられている檻だが──ログアウト可能なスポットであり、他の場所へ移動することが死んでもできなくなる……という強制セーブポイントだった。

 外界との連絡も取れないようにされているため、仲間と脱出に関する作戦を立てることも難しいだろう。

「……まあ、『SEBAS』には通用しなかったみたいだけど」

《あくまで、魔力による通信を断つための技術だった模様。重力波による通信に切り替えることで、接続が可能になりました》

「なに、その超技術!?」

 いつの間にか『SEBAS』が凄い技術を生みだしていたことにビックリしつつも、心身を癒すために紅茶を一杯……美味い。

 なお、ルリの慈悲深い指示によって、檻の中もある程度設備が整っている。
 俺は今居る檻の中に入る前、普通に何かをした人たちが仕舞われている部屋を見たんだが……そちらもそちらで、刑務所とは比べものにならないぐらい豪勢だったぞ。

 そして俺の居る牢屋は、看守が付き添ってくれているサービス付きだ。
 きっとだが、先ほど見た人たちの中でも一部は──ここに来たくて来ているのかもな。


 閑話休題おんなきしとふたりきり


「ところで……私は今後、どうなるのでしょうか……」

「訊きたいか……後悔しないだろうな?」

「え、ええ……覚悟はできています」

 前振りに少しビビるが、躊躇っていては前には進めない。
 こちらには『SEBAS』がいるんだ、何も怖いものはない! ……と思う。

「まずは我ら教団の者から鉄槌が下る──要するにリンチだ」

「…………」

「そして、死なない程度に痛めつけてこの牢屋より奥で幽閉する。まあ、数ヶ月もすれば反省するだろう」

 まあ、最後は残酷だが逃げようとも説得のしようもやり方次第でどうにかなるお裁きの仕方だ。
 さて、どのタイミングで動こうか……さすがにまた長期間の縛りは嫌なんだよ。


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