虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
匠の建設
ルリたちが去ったあと、宴会をして盛り上がったアイプスルの面々。
俺ことツクルもどんちゃん騒ぎを満喫したが……それはもう、過去の話。
時間はあっという間に過ぎて数日後、俺の前には建物ができていた。
「さて、こんな感じだろうか……」
三日間の滞在を経ることで、いったい俺たちは何を学んだのだろうか?
答えは簡単、好みである。
無意識下で選んでしまうもの、そこには人が隠している好みが如実に表れるものだ。
なので団体行動時も、アクションを強制せずにある程度自由に行わせた……それで何か分かると思ったから。
「まあ、だからといってそのまま反映させるようじゃ二流だけどな」
乗り物が好きだからと言って、その乗り物の中で一生を過ごしたいと願う者が居るだろうか?
居たとしてもそれは、変人の域に達した者であって一般人には当て嵌まらない。
あくまで意に沿う形で、意を汲み取った意匠でそれを実現化する──それが『匠』というものではないだろうか。
「とは言ったものの、そっくりそのまま再現するのはなー。それだと比べられそうな気がする……かと言って、要求のレベルを高くして叶えるのも……うーん」
トンテンカンと小槌を叩き、素材と素材を打ち合わせていく。
釘も無いのに自然とそれらは噛み合い、一つの形状を整えていった。
「どう思う、『SEBAS』」
《こればかりは推測でしかございませんが、そのままでよろしいかと》
「……なんでそう思う?」
《勘です、執事のですが》
執事の、しかも『SEBAS』のか。
それが本当の意味の直観か、それとも経験が物を言う直感なのかは分からないがが、信じるに値すべき貴重な意見だろう。
「分かった、参考にしよう。部屋の間取りとかはそのまま、オプションを付けるだけに留めておく」
《ご選択、ありがとうございます》
「訊ねた質問に答えをくれてただけではないか。『SEBAS』、それよりももう少し確認しておきたいことが──」
新築を造るのは、まだまだ時間がかかりそうだな……。
◆ □ ◆ □ ◆
始まりの街
「……ふむ、私にも造る気はないか?」
「なんでだよ」
一休みということで焼き串を食べるついでに情報収集を行おうとしていると、いつものように『騎士王』が現れた。
そして、つい先日までの経緯を焼き串のつまみとして提供していたのだ。
「私とて、政務だけが仕事ではない。時には領土を転々とする必要がある」
「まあ、あるだろうな」
「だが、そのすべてが私を温かく迎え入れてくれるわけではない。そういった場所では、寝ることも危険となる場合がある」
「他の騎士が居るだろう」
現実通りなら裏切り者になる可能性の高い『モードレッド』も、この世界であればとても真面目な少年だ。
頼ろうと思えば、いくらでも頼ることができるだろうに。
なにか、それができないわけがあるのか?
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