虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
滞在三日目
滞在三日目。
すでにこの世界を満喫してる家族だが、今日は遊べる最後の日であった。
ショウはパーティーとの冒険、マイは従えた魔物たちとの契約、ルリは……言わずもがなである。
なので今日は各自で自由行動を取り、最後までアイプスルの良さを楽しんでもらえるように計らった。
「『SEBAS』、三人が来てからの星の変化は? 何もないか?」
《旦那様の家族ということもあり、特に変化はございません。識別プログラムは正常に作動しております》
「そうか……それを証明できてしまうだけの高度なシステムなんだな」
調べたのは血液でもDNAでもない……魂とも言うべき概念。
すでに何度か出してはいるが、その観測に『SEBAS』は成功している。
俺の子供であるショウやマイはもちろん、妻であるルリともなんらかの結びつきが生まれているらしい。
そんな結ばれた魂のナニカを調べ、俺との関係性を識別できるのがそのシステムだ。
ついに姿を捉えたあの侵略者たちに備えるため、防衛プログラムを起動した。
望まぬ敵を排除する、されないのは俺との繋がりを示せた者のみ。
本来であればそういうアイテムがあるのだが……三人はどうやら、素で通れるようだ。
「嬉しいものだ。こっちでも、俺たちが家族だと証明されたんだからな」
《おめでとうございます》
「できるなら、俺たちだけの楽園を築きたいものだが……無理だろうな」
《奥様や子息様たちには、旦那様にはないナニカがございます。それは誰かと繋がることで意味を成します》
端的に言えば主人公である。
ただただボッチの主人公を見せる物語なんて存在しない、それは詩やエッセイとも言うべき別ジャンルだ。
ルリは俺を選んでくれた、ショウやマイにも誰かを導く力があるのだろう。
何もない俺だから分かる、その自然と魅せる力というものが。
「今はああやってもふもふ片手に遊んでいるが、いつか俺なんかじゃついていくこともできない戦いに出るかもしれない……ここはその疲れが取る、安息地として在り続けたい」
《では、どうされますか?》
「決まっているだろう──」
──凡人はただ、足掻き続けるのみ。
◆ □ ◆ □ ◆
「また、いつでも来てくれよ」
時間もギリギリ、解散の時が来る。
魔物たちも別れを惜しむように、つい先ほどまでもふもふボディを持つ者は家族に纏わりついていた。
「ええ、こんな楽園はどこにもないもの」
「絶対来る! 父さん、ちゃんとまた呼んでくれよ!」
「私も契約の分働いたら、またこっちに遊びに来るから」
「ああ、そうしてくれ」
セーブ石には復活時の座標の他に、転移の際の目印となる機能がある。
それを利用した転送陣で、そこへ直接乗った者をセーブ石のある場所へ運ぶことができる……家族はみんなそれに乗っていた。
「またな、絶対にまた会おう!」
『またねー!』
俺と魔物たちの挨拶を受けて、手を振ったり笑ったりして家族は消えていく。
粒子となってこの世界から去り、また冒険の世界へと旅立っていった。
「……ふぅ。さて、みんなでアイツらの冒険が成功することを祈ろう! 今日は宴会にするぞー!」
『おー!』
アイプスルは今日も平和である。
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