虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
滞在二日目
人間用の街といっても、俺が初期に狂ったように建設した施設以外はすべて今居る住民用のモノなので、それを使わざるを得ない。
しかし腐っても鯛ならぬ:DIY:、そんな条件でも家族に満足感を与えてくれた。
そんなこんなで二日目、ログインをした俺たちはホテルのような場所で食事を……せずに、再び世界樹の根元で食事を行う。
もふもふへの配給などがあって、そちらの方が家族が喜ぶからである。
『いただきます!』
「ああ、しっかり食べてくれよ」
家族の朝食は白パンとフルーツの盛り合わせ、それにシチューを用意してある。
食べる必要はないが、ゲームの中で食べても太らないのだから別に構わないだろう。
──あと、もふもふといっしょなだけで満足だろうし。
魔物たちには、それぞれ好物の素材(と少し隠すように混ぜたその他)を調理した品を配給していく。
このとき、いつもカルルやレムリアにも配給を手伝ってもらっているぞ。
「ショウ、マイ。貴方たちの妹ね」
「お母さん、そんなに軽くていいの?」
「夫のやったことを優しく包み込むのは妻としての甲斐性よ。それに、あの娘たちは何も悪くないんだから……そうよね、ショウ?」
「妹、か……」
なんだか別の可能性を見ようと、目を飛ばしているショウ。
きっとそこでは、リアルでも二人がショウといっしょにいるのかもしれない。
……三人目、か。
「ルリ……」「アナタ……」
「ハァ……」
おっと、学校で保健体育はバッチリな娘にため息を吐かれてしまった。
お姉ちゃんだし、すでにいろいろと察しているのだろう。
「さぁ、お代わりはあるからどんどん食べてくれよ!」
ちなみにだが、最近は新しく機械人形の少女も配給を手伝ってくれるのだが……そこはまあ、別の機会に。
◆ □ ◆ □ ◆
飯を食べ終われば、ツアーの続きだ。
海や山に向かい、その雄大さを仰ぐ。
それに、ずっとやりたかった家族団欒のピクニックというのも達成できた。
「なんだか幸せだ~」
「ふふっ、それはよかったわ」
「アイツらが居たから一人ぼっちじゃなかったけど、家族は誰も居なかったからな。寂しくない、って言ったら嘘になるよ」
「あらあら、寂しがり屋なのね」
ちなみに、今の俺はルリの膝枕で休憩をしている最中だ。
こっちの世界であれば結界を張らずとも生きていられるので、その柔らかな感触をダイレクトに受け取ることができている。
「……こっちの世界でも、いっしょに過ごせないか?」
「まだ難しいわ。お仕事もあるし、それを上手に纏めないと」
「ショウにはパーティーが居るし、マイにも従えている魔物たちが居るのか……全部の問題を解決しないとな」
「アナタならできるわよ」
無茶ぶりのような発言だが、ルリが言うと不思議とやれる気がしてくるのが面白い。
そうだな、一家の主としてそれぐらいのことはやってのけないとな!
「もう少しここにいる?」
「ああ、今はこうさせてくれ」
「分かったわ」
だが、今はこの時間を忘れずにいよう。
いつかの再会をよりよいものにするため。
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