虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
入星者
「さぁ、ようこそ夢の世界へ!」
アイプスルはこのとき、初めて俺以外の休人を向かい入れた世界となった。
入場ならぬ入星者は三人──そう、俺の家族たちである。
『…………』
まあ、いろいろとあった。
侵略者を倒した後、初めて[フレンド]という機能を使って三人(+知り合い)に連絡可能な状態とし、切りのいいタイミングで行き方を書いたメッセージを送ったのだ。
タイミング自体は家で直接聞いたので、誰も問題を起こさず入星できた。
やり方は簡単、また生産ギルドの一室を借りてそこに転送陣を置いただけ……レンタル料は高かったが、信頼できる場所だしな。
『…………』
だがまあ、様子がおかしい。
三人とも唖然とした様子で、この世界を見下ろしている……空に居るからな。
「……アナタ、これって……」
「造ってみました」
「父さん、スゲェ! マジでスゲェよ!」
「あれよね? その格好もそうだけど、完全に狙ってるわよね?」
ちなみに今の俺はいつもの作業服を着ておらず、代わりにとある量子物理学者が着ていそうな白衣に身を包んでいる。
あの夕焼けではなく朝焼けなんだが……それでも、イイ光景を見せられたと思う。
「これこそが、俺が開拓精神を全力で燃やした世界──『アイプスル』だ。人口はすでに数百を超えた、箱庭みたいな場所だな」
『…………』
「プレイヤーでは、俺を除けばお前たちが初のお客さんだ。粗相はしないように伝えてあるから、あそこの魔法陣から好きな場所に転位してくれ」
四つ置かれており──『海』、『火山』、『研究所』、『世界樹』と行き先を記した札がその奥に立てられている。
もちろん、こんな風に書けばどこに行こうとするかも分かっていたが。
「じゃあ、世界樹に行ってみようか」
全員がそこにまっしぐらだったので、そう言って観光を始めた。
◆ □ ◆ □ ◆
『歓迎しよう、ツクルの血ぞ……むぎゅ!』
「アナタ、こんな隠し玉があるなんて聞いてないわよ!」
「ふはははっ! どうだ、この世界樹の番人であらせられる『風兎』だ! この抗いようのないフォルム、さすがのルリだろうと屈せざるを得ない強敵のはずだ!」
「悔しい……でも、感じちゃう!」
そう言って、風兎相手に高速でもふもふを体感し続ける。
この際、ルリのハイパーラックが作用し、触る所々にクリティカル反応が起き、ビクンビクンと風兎を揺れ動かす。
『ああっ! や、止めて……くれ、このままだ、と……理性が……』
「理性なんて要らわないわ! ここは理想郷で、私はその住民! もふりもふられ夢の世界にぃいいいいぃ!」
家ではペットを飼っていない反動が、ここへ来て暴発している。
まあ、分かっていたことだから夫は気にしない……そして娘や息子たちもな。
『もふもふー!』
うん、だって同じ反応をしているから。
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