虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天の戦い その後
さまざまな戦いが……そして、英雄の誕生があった。
侵略者たちは最終的に、『天』と呼ばれるメンバーが力を合わせることで追い返す。
その際の栄誉を称え、『五天』の名が休人にも現地の者にも強く認識された。
星の剣を振る勇者──『闘天』ショウ。
攻撃特化した賢者──『魔天』ローム。
支援に長けた聖女──『援天』ルリ。
運命を操る冒険家──『冒天』カエン。
そして、最後の五人目は──
◆ □ ◆ □ ◆
冒険世界の生産ギルド、そのギルド長室では密会が行われていた。
中性的な格好をした子供は、変声前の声を振るわせてとある記事を読む。
「『魔物を操る孤独者──『孤天のマイ』』ね……いいのかい、ツクル君?』」
「何がでしょうか?」
「本来ここには、君の名が……もっと言えば他の『天』たちの名前も載るはずだったんだろう。けど、意図的に情報を操作した。ただの強者に歪め、選ばれた『天』たちだけがそうであると……どうしてだい?」
「有名であることと幸せであることは、平等ではありませんので。まして、私のように厄介事の多い身では」
なにせ、終わった翌日には『騎士王』が街に遊びに来ていたからな。
しかも、仕事をしっかりと終わらせていたのでそれを口実に追い返せないという……あの日は実に苦労したよ。
すでに侵略者は去り、平穏が訪れていた。
街の近くにドロップしたアイテムもすべて回収が終わり、今ではどのように使うのかが考察されている。
生産ギルドもまた、プレイヤーにはできない方法で加工できるのかを問われていた。
「──何はともあれ、こちらが例の資料となります。簡単に真似されては困りますが、それでも生産ギルドだけが技術の独占が計れるよう、素材に注意しましたよ」
「……君は相変わらず、理不尽だね」
「そうでしょうか?」
侵略者たちが残す素材は、ちゃんとした加工作業を経ないと真価を発揮しない。
また、一部の素材では装備者が呪われるといった事案が発生しているとのこと。
そこで生産ギルドが動く。
確実に加工に成功し、いっさいのリスクを負わないのであれば──プレイヤーは必ず生産ギルドに加工を望むようになるだろう。
「……まったくだよ。最近台頭し始めた休人でも、まだ解明できていない方法。それを君は、あっさりと数日で完成させるんだから」
「台頭、ですか?」
「君みたいに従順に従ってくれる、というわけじゃないんだよ。別のギルドの権力を借りて、どうにかこっちの目を掻い潜ってるって言った方がいいかな? まあ、それでも君には及ばないけどね」
生産系のプレイヤーが、ついに独立を始めたのか。
ギルド長が少し説明してくれたが、世にも恐ろしい商人ギルドと組んだんだとか。
「その人……大丈夫ですかね?」
「利益があるうちは大丈夫だよ。君の場合はデカすぎてあっちも狂うってだけだから」
「全然大丈夫に聞こえませんね……」
まあ、無事を祈るってことで。
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