虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天の戦い その06
「こ、こちらツクル……聞こえているか? オーバー」
連絡用の魔道具に声を囁き、返事を待つ。
《…………》
しかし、聞こえてくるのはノイズ音のみ。
戦いの音も、そこに居る者たちの声もまったく届かない。
「映像、映像は……って、ハァ?」
向かわせていたドローンのカメラが、突然映像を映さなくなった。
それだけでなく、周辺に向かった機体すべてがロストしているとのこと。
「セバヌス、状況はどうなっている」
《仮定『侵略者』による妨害能力が発動した模様。外部から解析した限り、外界との遮断が行われているのかと》
「魔力の糸が切れたのも、それが理由か」
《魔石によって稼働は続いております。信号が途切れてしまったため、ロストとして扱われたのだと推測しました》
また敵さんも面倒なことをする。
あくまで一ヶ所だけ、そういう場所を設けることで特別感を出していた。
嫌ならそこに行かなければよい、そんな空気を出すためだろうか。
「セバヌスは行けるか?」
《現在、要救護者の援助を行っております。最低でも、数分を頂きたいところです》
「……向かわせられる者は?」
《少なくとも魔力の糸が切られます。自我の無い者は向かわせられません。私とカエン、もしくは……》
「ダメだ。絶対に外には出さない」
星を守るため、いくつもの実験や研究をしてきた……そして、ヤツは誕生した。
俺はそれを解き放とうとはしない。
なんて、新キャラフラグは置いておくとしてだ……救援は必要だろうか?
ギリギリの距離でドローンを設置して観察してはいるが、少なくともすぐに危険な状態というわけではなさそうだ。
たしかにちょっとボス感のある異形種が現れたが、騎士っぽい奴らがそれと戦っているし、平気か?
「それでも……逝かないとな」
ボスは数段階変身を残し、絶望をもたらすというのは定番だ。
何もなければそれでよし、意味の無い無駄な対策だったということで済む。
もしも、実は、かもしれないとフラグはいくつも存在する。
ショウが起こすような前向きなものであれば、俺も無視するが……侵略者が起こそうとしているものは負でしかない。
「始めよう」
代理として働く人形を数体並べ、生産活動に勤しんでもらう。
少しだけ品質が落ちるだろうが、戦場で傷ついた者を治す程度であれば容易い。
「俺の嫁に手を出しておいて、ただで済むとか思うんじゃねぇぞ……なんて言えたら、さぞかっこいいんだけどな」
うちの奥さん、危機的な状況に陥ることがほとんどないからさ。
俺が行くときって、だいたい問題が解決しているんだよなー。
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