虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天の戦い その05
もちろん、中継映像の中では大パニックが起きている……なんてことはない。
大きな魔物を従えている者を、すでに戦っている彼らは知っているからだ。
「ふむ、こちら父さん。オーバー」
『えっ? どこから……あっ、もしかして』
「そうだ。家族用の招待状にだけ、無線機能も付けておいた。オーバー」
『えっと、私に何か用? 今、ちょっと手が離せないんだけど……』
まあ、それはこっちでも把握している。
複数体の魔物たちを統率し、その一体ごとに異なる指示を出していた。
効率は悪いが、その分やってほしいことを確実にやってくれる……良い選択だ。
「そっちに唸り声しか出せない人造の魔物を送り込んだ。マイの言うことを聞くようにしてあるから、うまく使ってくれ。オーバー」
『もしかして……さっき突然出てきた巨大なヤツ?』
「それと小さいのもセットだ。すまないが、父さんは直接戦えない。できるだけアシストはするから、街を守ってくれ」
『言われなくても、分かってるわ。私も最初はお世話になったもの』
少々マイの居る辺りが苛烈な戦いを始めたので、重要なことを言って回戦を切る。
そして、そのまま別の回戦へ繋ぐ。
「ショウ、聞こえるか? オーバー」
『あれ? なんで父さんの声が……』
「細かいことは家で。それより、そっちはどうなってる? オーバー」
『姉さんの居る方が危なくなってるし、そっちに行こうって』
離れた場所を守っているんだが、スキルか何かで危険を察知していたのだろう。
ショウはパーティー単位で活動しているはずだが、今日の会談を理由として自由行動でもしていたのだと思う──数が足らず、三人で戦っていた。
「マイの方には父さんが味方を送った。だから、そっちは気にしなくていい オーバー」
『そっか、なら大丈夫だ!』
「ああ。あと、数が足りてないだろう? お前の方にも援軍を送ろう。ついさっき、やることが減って暇になっていたらしい。父さんのことを言っていたら、ソイツが味方だぞ。オーバー」
『どんなヤツなんだろう……』
楽しそうにしてくれていることに俺も嬉しくなりながら、回戦を切る。
そして、別の者に繋ぐ。
「カエン、仕事だ。ショウの……『闘天』の下へ向かって、サポートをするんだ。武装はバージョン三まで許可する」
《畏まりました》
「だが、もしそれでも勝てない奴が現れたとしたら……そのときは、何でもやれ」
《……その言葉、しかと受け取ります》
映像の中のカエンが、力強く地面を蹴りだしてショウの下へ向かう。
凄まじい速度で進むが、周りの者への影響はいっさいない。
「さて、残った連絡先はあと一人……」
少し緊張してきた手を、もう片方の手で押さえながら連絡を取る。
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