虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

天の戦い その03



「──おうおう、もう始まってたか!」

 街の外に派遣しているドローン。
 そのカメラが映しだしたのは、一目見て魔物とのデザインの違いが分かる禍々しい侵略者たちであった。

 なんだろうな、表皮は変わらないんだ……ただ、眼が逝っちゃってる気がする。
 人型や獣型、魔物に近しい形態だな。


 映像からいくつか推察し、必要そうなアイテムを考えていると、脳裏に声が走る。

《《お待たせしました》》

「『SEBA……じゃなくて、セバヌスとカエンだな。よし、二人は戦闘を頼む。居ないのは生産者である俺だけで充分だ」

《《畏まりました》》

 俺のサポートは外からでもできる。
 のであれば、活躍をしてもらう方が『天』のイメージアップに繋がるだろう。

「それぞれ、『天』らしいアクションを取ってくれ。『冒天』は武器を取って前線で戦い抜け。『統天』なら透明か迷彩状態になれるドローンを使った攻撃とかな」

《《はい》》

「ここが重要だが、必要な物があったらすぐに言ってくれ。『巧天』で『死天』な俺だから、すぐにアイテムは用意する」

 すでに二人も参戦しだしていた。
 カエンはゴーレムであることを利用し、痛覚無効状態でバッタバッタと屠っていく。
 セバヌスはドローンを的確に操作し、誰かがアシストを求めるとそこにドローンを派遣している。

 一方で俺は、二人に予め仕込んだ転送システムを介して物資の補給を行う。
 求める者が居れば、メッセージ付きでそこへアイテムを回しているのだ。

 期限が今日までしか持たない、あらゆる状態異常と身力値が回復するポーション。
 今日が終わると勝手に消える、凄まじい攻撃力や防御力を秘めた武具の数々。
 そして、一度限りだが相手をほぼ確実に死なせることができる『死天』製のアイテム。

 メッセージに『巧天』のアイテムだということを宣伝しつつ、それをバラ撒いていく。
 すると効果を実感した者は、自然とアイテムの作者に感謝する……貴重すぎるからな。

「全線で戦うなら、俺は超遠距離からの補助に回るのが一番だ。死なないし、物資だけならどこからでも送れるんだからな」

 おっと、状態異常をランダムで発生させる魔物か……さっきのポーションをもっと増産しないと駄目だな。

「──:DIY:、起動」

《:DIY:が起動されました
 使用者『ツクル』の指定能力値──概念崩壊……成功しました
 アイテムの作成成功後、または条件無視によって解除されます》

 毎度お馴染みの全能感が支配し、なんでもできる自信を俺に与えてくれる。
 今回は家族が参加していることが確実、その邪魔をしないようにサポートすることが何より重要な任務。

 ──侵略者? そんなの二の次だよ。


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