虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天の戦い その02
俺は真っ直ぐに戦闘地帯へ……行かず、その足でギルド長の部屋に赴いた。
自分の所属する組織のトップが、連絡を取りたがっていたので。
「お呼びでしょうか、ギルド長?」
「うん、そりゃあもう重大な事態だからね」
「私たちの下にも、神からクエストが強制のものとして送られました」
「そうだね。何せ侵略者だ、手はどれだけあろうと足りないだろうね」
ギルド長はそう言って、ため息を吐く。
……俺が問題を起こしたという時より、その息が浅いのはなぜだろうか。
「侵略者、ですか。魔物ではなく」
「別ものさ。君たち休人も知っての通り、この冒険世界は異なる世界とのアクセスも可能になっている。生産の本場『生産世界』や武術の修行場『武闘世界』なんてね」
「では、そういった星のいずれかから侵略者というのは……」
「うーん、半分正解かな? 外交なんて存在しない、ある世界から彼らはやってくる。暫定的な名前だけど、『侵略世界』ってぼくたちは呼んでいる」
つまり、この世界の【魔王】が率いる軍勢では無いと。
確認してみると、そちらとの戦闘も行われたことがあるらしい。
──誰彼構わず、果敢に攻撃しているというわけだな。
「けど、この街が狙われたのは初めてのことなんだよ。君が長期間居なかったときでも、休人たちは神にどこかへ連れていかれるだけで問題なかったし、何より平和だった」
「その平穏が今、壊されたと」
「トリガーが君たちの集まり、とは言い切れないのが不穏だけどね。神が定めた、新たな強者の概念である『天』。その実験場としてここは選ばれたのかもしれない」
「…………」
この可能性は、かなり高いだろう。
すでに『SEBAS』からも、十人が集まれば何かしらのイベントが起きるかもしれないと聞かされていた。
──それでも会談を行った、世界よりも家族の方が大切だったから。
「一集団はすでに現場へ向かっています。もう一集団にも連絡は済ませました。残すは一つ──アナタの指示だけですよ、ギルド長」
綺麗に直立し、視線をギルド長に向ける。
あくまで俺はギルド長よりも下の地位、社会人らしく指示は仰ぐべきだろう。
……というか、虚弱な生産士がわざわざ戦闘に赴く必要もないし。
「君への指示かい? うーん……、君も戦力として期待されているのであれば、前線で侵略者と戦ってほしい。けど、生産者としての君が居れば救われる命もあるだろうし。いっそのこと、前線じゃなくて全線で……なんて指示はダメだよね?」
「──いえ、それで構いませんよ」
「そっか、やっぱりダメ……じゃないの!?」
「はい。無理なことは無理だと言います。可能ですので、それをお伝えしました」
軽く打ち合わせをして、用意してもらった個人用の生産室(完全プライベート)の中に入っていく。
気分は総司令官、さて頑張るぞ。
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