虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
裏五天談 その02
次の『天』が来たのはかなり後だった。
どうやら時間にルーズな奴らが多かったようで……『孤天』もだな。
見て分かるムキムキ具合、とある野生星人のような金髪を逆立てた青年。
『よう! ……って、まだ二人かよ。せっかくわざわざ遅れて来てやったのに』
遅刻を悪びれる様子もなく、ニヤニヤと笑みを浮かべるその男。
だが、不思議とそこに苛立ちを感じさせないのは本人の雰囲気のお蔭だろう。
まるでこちらをからかっていると、すぐに分かるような感じで──
『ガハハハハ……むっ? おい、お前ら。俺と面識が無いか?』
『『(ブンブン)』』
『そうか? どっかで見たことがあるような顔つきっていうか、お前らのような奴らをすでに知っているっていうか……』
『『(ブンブン)』』
全力で首を横に振る俺たち。
気まずい雰囲気で知り合いかと訊ねられれば、確証が無い時点で横に振るように鍛えられているのだ。
前の会談で懐かしの『魔天』に会ったりしたが、アレはルリが確実にそうだと事前に証明してくれたので、安心して声をかけられのだった。
『そうか……なら、『ドラジー』をやったこともねぇのか?』
『『(ピクッ、コク……コク)』』
『おぉっ、やってんじゃねぇか!』
俺だけでなく少女──椅子の紋様からして『暗天』──もまた、同じく椅子で見分けるのであれば『破天』の問いに頷いていた。
ゲーマーというのであれば、この問いを否定するわけにはいかなかったのだ。
かくいう俺も、ルリやタクマなどとやっていたことがあるオンゲーである。
できるだけランダムにこだわっていたが、そういった要素がプレイヤーのステータスには存在していなかった作品だ。
『俺はそこで『渡り船』って、チームに所属してたんだが……お前らは──』
『『って、キーシ(かよ)(じゃん)!』』
『なんだよ知り合いかよ! つまりあれか、お前らも『渡り船』の……』
『『メンバー(だ)よ!』』
ああ、まったくこれまでのEHOライフに必要無かったから言わなかったな。
オンゲーでギルド制度やクランシステムが存在するとき、俺とルリとタクマはだいたい『渡り船』って名前で結成していた。
他にも知り合いがいるが、ゲームが被らない場合もあったからな。
『ドラジー』ではかなりのネッ友(ネットの友)が所属していたが……こいつらもか。
『なんだ、そっちもかよ。さっきまでビクビクしなくてよかったのか』
『そうかそうか。なら、こっちもメンバーと話すときみたいに軽く言えるな!』
『……ん?』
今の台詞は、キーシのものではない。
先ほどまでは俺と全然会話をしていなかった、例の少女によるものだ。
『全部の『天』で話がしてぇなんて言われてよぉ、いったい何をするかが不明なんじゃ多少ビビったって仕方ねぇよな。そうそう、だからそっちの兄ちゃんも硬くなってたんだろう? まあまあ、同じ元『渡り船』のよしみもある、バッチリ任せとけ!』
超高速でペラペラと話しだす。
暗殺者らしからぬ、その軽さ……嗚呼、たしかにタクマの言っていた通りだ。
『まさか……『ハック』、なのか?』
『ああ、そうだぜ。わたし……いや、おれこそが最強暗殺者ハック様だ!』
うん、確認が取れてしまったよ。
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