虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
表五天談 その後
「ハァ……疲れた」
とある施設の中で、ため息を吐く。
俺の背中側の壁は一面緑色で、先ほどまで座っていた椅子しか存在しない。
正面には一台のカメラが置かれている……こんな状況の部屋を、『撮影部屋』と称していいのだろうか?
「お疲れ様です、マスター」
「ありがとうな、カエン」
部屋のドアが開き、先ほどまで映像越しに見ていた子供が飲み物を持ってきてくれる。
それを受け取り、嚥下する……冷たさが伝わって少し楽になった。
分かっていたと思うが、『冒天』の代理をカエンにやってもらっていたのだ。
隠さずに両方やってます、という選択肢は存在していない。
「しかし、やっぱり『魔天』の正体はアイツだったのか……静止画で確認した時、もしやとは思ったんだよ」
「旦那様にとって、彼の者はどのような立ち位置なのでしょうか?」
「うーん、そうだな……数々の戦場を共に渡り歩いた戦友の一人だな」
どの戦場も激しいものだった。
だが、どんなときもアイツは魔法使い系のキャラだったっけ?
もしそれがダメでも、ギリギリそれっぽくなるように仕立てていた気がする。
「他にも数人いるんだが、ソイツらも含めて大事な戦友だ。ルリはどう思っているか分からないが、同じ場所に居たぞ」
最強の運を引き連れ、並み居る猛者たちを蹂躙する圧倒的な才能。
そして、それを超えたセンスが彼女には備わっているため──無敵だった。
仲間内で、ルリに誰も敵対しようと思う奴はいなかったし、彼女が本当に望めば最強であろうと地に伏す。
そういったことを彼女の傍で見続けたからこそ……今の俺たちの関係がある。
閑話休題
「とりあえず、次の会談の準備をしよう。どうなっている『SEBAS』?」
《はい。接続先の変更、完了しております》
「なら、椅子の方も変更を。部屋の意匠は変えられないし……雰囲気そのものを変更できないか? たとえば、投影の暗さとか照明を使ってとかさ」
《可能です。すぐにテストを行いますか?》
すぐに頷き、調整を始める。
先ほどまでの正規の『天』たちによる会談と、これから行われるもう一集団の『天』たちで行う会談。
招待状はすでに届いているし、欠席者が出ようと確実に来る者は居るのだから準備だけはしておいても構わないだろう。
「というか、『魔天』がアイツだったってことは……まさかな」
だいたいの『天』は観測時に外套などで顔が露見することを隠していたので、それを見ることができなかった。
だが、なんとなく懐かしいアクションなどが印象に残っているんだ。
「けど、さすがにな……」
こうして考えるのも、創作物ではフラグになるのかもしれない。
だが……たまには縋りたくもなるよな。
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