虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
表五天談 その02
『遅れてすみません』
そう言って現れたのは、探検家の紋様が刻まれた椅子から投影された少年だった。
背は『闘天』よりも少し低く、落ち着いた色味をした茶髪の子供。
ペコリと頭を下げると、まずは『魔天』と挨拶をする。
そして次に、残った二人に声をかけた。
『貴方がたが、『闘天』と『援天』でしょうか? お話はかねがね聞いております。私は『冒天』、以後よろしくお願いします。』
『まあ、立派に挨拶ができるのね。『冒天』君、『闘天』とも仲良くしてちょうだい』
『はい。『闘天』、よろしくお願いします』
『敬語なんていいよ。『冒天』、よろしく』
それから、『冒天』は質問を受けていく。
初めは『魔天』の方を見て、ありきたりな回答をしていた『冒天』だが、彼についての情報を『援天』から受けると少し踏み込んだ回答をするようになる。
自分は少し特殊な種族で、居た星も特殊な場所だった。
だからこそ、自分は『冒天』を務めているなど……楽しく時間を過ごしていく。
そして、最後の椅子が光を放つ。
金づちとノコギリがクロスした紋様が刻まれた椅子は、ゆっくりと像を結んでいく。
茶髪な点を除けば、ごくごく普通な男性。
いくつものポケットが取りつけられた作業服に身を包み、ニコリと笑顔を浮かべ……そのまま顔を引き攣らせる。
『……知り合いしかいないな。わざわざ、表向きな対応じゃなくてもいいか』
『初めての邂逅がこうって……アナタ、服は選びましょうよ』
『いや、そうだがな。あいにく服に関して注意してくれる人には会わなくて……』
『そういう問題じゃないの。いい? 衣食が満ち足りたら、礼節を弁えるの。なのに、どうしてアナタは衣ができてないのに礼節をどうにかしようとしているのかしら。それに、その格好は……』
少しばかりのお説教が始まる。
現れた格好からそれを予想していた二人の天──『闘天』と『魔天』はため息を吐き、分からなかった『冒天』はオロオロしだす。
『あ、あの、『巧天』は──』
『えっと、うちの父さ……『巧天』がごめんな。きっと、迷惑をかけてるだろ?』
『いえ、そのようなことは……』
『ゲームスタイルが特殊なのは聞いて知ってたけど、まさかああいう服でいるなんて、母さ……『援天』が見たらどう思うか分かっていたはずなのに』
すぐに服に関する話は終わるのだが、また別の内容で話が揉める。
一番細かかったのが、彼自身のことではなく『冒天』についてのことだったが……そこに誰もツッコミを入れない。
かくして、五天の全員が揃うのだった。
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