虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
部屋設営
「これでよしっと」
ギルド長に与えられた部屋。
あえて何もない場所を借りた俺は、次々と持ち込んだアイテムを設置していた。
机や椅子は当然の必須アイテムとして、他にもこの会談だからこそ必要な物が多い。
「『SEBAS』、これでいいか?」
《全体通信用の魔道具を、中央の天井に設置していただきたいです》
「分かった、すぐに取り付ける」
床に置いていたミラーボールのようなアイテムを持ち上げ、天井に押し付けた。
すると、アイテムが本当のミラーボールのように一瞬輝き、手を放してもそのままの状態を維持できるようになる。
「さて……これでお仕舞いか」
《各人が正常に起動させるのであれば、おそらく問題なく使用可能でしょう》
「天邪鬼が居るかどうかって話か。まあ、改造できないようにブラックボックス化した所が多いし、迂闊に壊したりしないだろう」
仮に壊したとしても、こちらから代わりのドローンでも飛ばせば中継はできるし。
一人だけ状況が違うということで、恥ずかしそうに目立てばいいのだ。
「画面越しとはいえ、ようやくだな」
《おめでとうございます、旦那様。現実ではこういった話は?》
「話題にはしているが、最近はできるだけ情報の流出を抑えているな。よくは知らないんだが、知っていると損するってシステムが導入されたらしく」
《その情報でしたら、こちらでも把握しております》
なんでも脳波を計測して、知っているという意識の下で行動をしていると行動の成功率が少し下がるらしい。
また、クエストを誰かに教わったやり方でやれば報酬が減ったりグレードが下がるそうで……知りたいと思って知ったものほど、そういう傾向になるんだとか。
「それでか……うちの家族は、他のみんなを傷つけないように公開を控えていると。そうかそうか、てっきりお父さんが嫌われたのかと実は思っていたんだが……そうじゃなくてよかったよ」
《おめでとうございます》
「ああ、ありがとう。そうだ、抜け穴でも探してくれないか? 俺はどうせなら、家族でそれを話し合ってみたい」
《旦那様のためとあらば……畏まりました》
明日はきっと、イイ日になるだろう。
ログアウトをしたら、しっかりと招待状を持っているように言っておかないと。
──プレイヤーといっしょに、何かをやるなんて久しぶりすぎる!
◆ □ ◆ □ ◆
さまざまな思いが錯綜する。
選ばれし五の高みたち、その表と裏。
ありえない出会い、求めていた再会。
神に遊ばれし一人の青年は、ついに本格的に同朋たちと絡み始める。
『おめでとう、ツクル君。けど、何事もそう一筋縄じゃいかないんだよ……君がこれをどう乗り越えるのか、期待しているよ』
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