虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

会談準備



 新しく『銀花』も増えたアイプスルだが、現在は慌ただしく急いでいた……俺が。
 なぜなら、今まで放置していたツケが廻ってきたからである。

「装置の方は準備できたが、まだ設置の許可が得られてない……そうだ、納品も少し早めておかないと。それに、絡まれた際の対人兵装の準備もするか?」

 どこからか、止めてくれと声が聞こえてくるのは気のせいだろうな。
 連絡用にと渡していた小さな装置に紙を載せると、すぐにそれは姿を消す。

 だが時間が経つと、先ほどとは畳み方の異なる紙が同じ場所へ現れる。
 すぐにそれを見ると、同じく小さな機械と紙を載せて再度送り届けた。

「交渉の許可は貰えた。ただ、やっぱり中継点として貸してもらうんだから、お礼を用意しないとダメみたいだ。『SEBAS』、どうすればいいと思う?」

 某スマホの便利AIに話しかけるように質問すると、機械が演算したほぼ正しい回答を伝えてくれる。
 人間様はそれに従っていくだけで、だいたいのことは上手くいくようだ。

《設計図をお与えになりましょう。こちらで用意いたしますので、旦那様にはそれを届けていただけませんかと》

「ん? まあ、それぐらいならたぶん、どうとでもなるだろうけど……いったい何の設計図を送るって言うんだ?」

《銀花のプロトモデル、それを元に開発したプロダクトモデルです》

「相変わらず、無茶苦茶だよな。まあいい、了解した。完成したら連絡してくれ」

 優秀すぎる執事に任せれば、基本的に主側がやることなんてほとんど存在しない。
 あくまでも、主を立てようとはするが……物事には限界が存在する。

「じゃあ、『SEBAS』。先に納品とかを済ませておく。何かやらなきゃならないこととかってあったか?」

《特には……いえ、一つだけ。道中、お気をつけてください》

「ハハッ、『SEBAS』は心配性だな。わざわざフラグを立てるような野暮なこと、するわけないだろ」

《そうでしたか。申し訳ございません》

 ただ、声色的に何かあるなと思っていそうだし、俺自身もこの台詞セリフ自体がフラグだなとなんとなく悟ってしまった。
 だが、護衛なんて用意したらそれこそ問題になってしまう……第一、彷徨う暇人に捕縛されてしまうだろう。

「まあ、どうにかしてみる。これが終われば晴れてこの目で拝むことができるんだ」

《ご健闘を》

「ああ、行ってきます」

 そして、俺は冒険世界アドベンチャーワールドへと旅立った。
 予想通りというかなんというか、絡まれることもあったが無事に乗り切り、暇人を元居た場所に送り返すことにも成功する。

 ……さて、少し話しておかないとな。


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