虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
機械皇 その08
「……同じ型ですし、当然ですか」
いなくなっていた少女が再び俺の前に、というわけではないようだ。
少し雰囲気が違い、武人のような迫力が感じられた……何より、瞳の色が青ではなく赤色だった。
『すでに大量生産の目途は付いている。君に侍らせていた案内用と違い、戦闘用としてカスタマイズされた一品だ』
「それはそれは、なんともおそろしい」
『君のやるべきことは簡単だ。彼女の対高位不死者用戦闘アルゴリズムの完成のため、何度も死んでもらうことである。なぁに、君は死ぬことがない。切りの良いところで終わらせてあげよう』
たしかに、『生者』による擬似的な無限リトライは高位の不死者にも似ている。
死を克服した、だからこそ生に囚われたアイツらはそう簡単には折れない。
だが機械人形が、それこそ同じスペックで延々と自分を殺そうとするなら……いずれは精神的に限界が訪れてしまい、やがては死を受け入れてしまう。
──けどそれは、一度死んでから蘇ったりするような輩の場合だからな!
「……そう簡単に、事が進むだなんて思わないでください。たとえどのようなタネがあろうとも、『生者』は生を諦めない」
『同時に、あらゆる死をも取り込んだ君だ。そう簡単に実験が上手くいくとも思ってはいないさ』
赤い瞳の少女の背後にある魔法陣。
そこからぞろぞろぞろぞろと、まったく同じ顔が現れれるのは少し猟奇的だな。
武器を持っている場合はちょっとだけ違うが、それでも感想は変わらない。
無機質な瞳が凍り付くような視線を向けているし、持っている武器もなんだか少し赤い着色がされているし……。
『ルールは簡単、そこにある機体すべての破壊または捕縛。要は、動けないようにすればそれで充分だ。対高位不死者と言ってはみたが、憑依で乗っ取られてしまう可能性も高いことを想定してね』
それが肯定できるなら、もっと別のことも考えてほしかった気がする。
殺意が無いので死亡レーダーの反応が弱々しく、不意打ちなんていくらでも受けてしまいそうだ。
『何か質問はあるかな?』
「これを受ける、意味がありません」
『あるとも。実験が捗るではないか』
「……本気で言っているのですか?」
冗談さ、とモニターの中で何者かが笑いだす……ようなふりをしているが、全然笑っている感じがしない。
本気で言ってるな、これ。
『報酬が欲しいのであれば、この実験が終了したあとに用意しておこう。君が必要としているであろう物、それをね』
「……いいですね。それでやってみせます」
たぶん、『機械皇』の造った機械の廃棄品でもくれるのだろう。
それで充分だし、むしろそれ以上に価値のある物は……ないわけだが、まあこういう簡単な仕事の報酬にはピッタリだ。
──でも、あんまりやる気がしないな。
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