虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

機械皇 その05



 さすが『機械皇』と名の通り、少女が見せてくれた機材や設備は一流を超えたプロ級の物ばかりだった。

 現代技術に届き得る品や、すでにそれを凌駕する品、またそもそも地球では考えられないような概念を用いている機材など……それはもう多数に存在していたよ。

「案内終了。お疲れ様でした」

「いえ、楽しい時間でした。それはもう、時間を忘れるほどに」

「面映。お気になさらず」

「明日……は無理ですが、しばらくの間お世話になりたいものですよ。また、この世界に来る際はよろしくお願いしますね」

 大まかだがログインする日を伝え、案内されていた客用の個室に入る。
 整えられた清潔なベッド、近未来感があるような機械仕掛けの品だった。

「少しだけ罪悪感も湧くが、あとで戻せば許してもらえるだろ……ちょいちょいっと」

 部屋にある機会に、これまた機械仕掛けの籠手を着けて触れていく。
 すると一瞬不協和音が鳴り、機能していたものがすべて停止していった。

「部屋自体に結界を施して、そのうえでジャミングをかけておこう……ベッドの機能が再起動しないように、それも念入りに……」

 部屋の四方に魔道具を置き、ベッドの四方にもまた異なる魔道具を設置する。
 本来は改造してでも安全を得ておきたかったが、『SEBAS』と内密に相談した上でそれは控えておく。

「お休みなさい……」

 そして、[ログアウト]を選択する。
 次に目を開く時、俺はこの場所に居られるのだろうか……王道のアレを言わざるを得ない展開になってなきゃいいけど。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 その者はモニターを切り替え、ある被検体の様子を見ようとする。

「?」

 しかし、映像が切り替わった先ではノイズが走り、いっさい状況が把握できなかった。

 この際、機械の不調などは疑わない。
 ここにある機械すべてに、絶対の自信を有しているからだ。

「……」

 普段はカメラとして使わない物も含め、すべてが正常に機能しているかを確かめる。

 ──結果はすべてが故障。
 完全に破壊されたわけではなく、送信する機能が断たれているのだと理解した。

「……」

 自身の手足となる物を使い、今度は直接被検体を観察しに行く。

 だが、これもまた失敗する。
 入口に結界が構築され、その中へ入ることができなかったからだ。

「──」

 唖然、これまで一度として手を止めていなかったその者は、ようやく違和感に気づきその動きを停止した。
 ここまでの秘密主義なのか、そしてそれを実行できるのかと。

「……」

 だが、それでもやるべき理由があった。
 その者は被検体が目覚めるその前に、どうにか突破を試みる。

 そして、被検体の瞼が開く時──


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