虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
機械仕掛けの不死
「『機械皇』か……ああ、知っているぞ」
「本当ですか?」
「私を誰だと思っている。『超越者』の人となりならある程度理解している」
三人でポーションを作る中、訊ねた質問にそう答える『錬金王(先代)』。
いったん手を止めると、『錬金王(現)』である人造人間の少女ユリルの作業工程に口出しをして、再び話を戻す。
「基本的に無害な奴だ。そう畏まらずとも、問題はないだろう。ただ、機械に関する話になるとその枷が外れる」
「機械フェチ、ということですね」
「さぁ、どうだろうな。理由はともかく、奴はより強大な機械を、というわけではなく便利な物を造ろうとする。そこに関しては、少し『生者』とも似ているな」
ニヤリと笑う『錬金王』。
俺が生産フェチなのか、とジト目を向けてやりたいところだが……家族に関わるアイテムであれば本気になりそうな気がするので、あまり頭ごなしに否定はできない。
「私は、錬金を作業としか捉えていなかったからな。今は可愛い弟子が居て、頼もしいビジネスパートナーが居るから、関わり方も一部変わってはいるが」
「そ、そんな……可愛いだなんて……」
「注ぐ魔力量がぶれているぞ、そのままだと炸裂する」
「あっ、ああ!」
ユリルは慌てて錬金中の大釜に専念する。
俺と『錬金王』も同じ作業をやっているのだが、二人とも無意識的にその工程をやってのけるので話していても問題ないのだ。
「もっと内面的な話をしようか。機械によって永遠の寿命を得ている『機械皇』は、その本体を『超越者』たちに会わせることは決してない。造り上げたストックであれば、いつも見せるのだが……死にたくはないからな」
「永遠の寿命、ですか」
「あらゆる生産技術の中で、不死とは研究されるものだ。『生者』のような特殊例を除けば、あれもまた成功例なのだろう」
「成功、しているんですか?」
そういうのって、だいたいどこかしらに不備が生じているものではないだろうか?
だが、この世界にはご都合主義が働いているようで──
「神代魔道具を解析し、造り上げた機械だと言っていたな。仮に本体が死んでも、その自我と魂を維持したまま別の肉体に移ることもできるとのことだ」
「それは……たしかに成功ですね」
「だが、入れるべき器の方に奴は満足できていない。そこで『生者』の出番というわけなのだろう」
「私が、器を?」
コクリと頷く『錬金王』。
まあ、すでに人形の製作は行っている。
加えて言えば、限りなく生体に近い人形もとっくに準備できていた。
「──奴も目の敵にした『生者』を殺そうとして招いた、というわけでもなかろう。気を楽にして招かれて来い」
「はあ……ではそうします」
お土産、期待しているぞという声を聞きながらアトリエから去る。
なーんか、嫌な予感がするんだよな。
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