虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

当千の試練 その10



 それから結構な死を試してみたんだが、一つとして有効打になるものは無かった。
 電気も通さず、空間の捻じれも感じず、核は流動する……核を破壊できないスライムは本当に厄介だな。

「せめてそっちが対処できれば、簡単に倒せたのにな」

 スライムの弱点、それは体の中にある核を傷つけられると体を維持できなくなること。
 その損傷具合に応じて身に纏う粘液の量が減り、最終的に自壊するというオチ付きだ。

「なあ、『SEBAS』。そっちの方で対処法とか浮かんでないか?」

《……申し訳ございません。神の干渉によるものか、私の想定外のことが起きています》

「そっか。まあ、一度目の試練も強引に突破しなきゃいけないようなものだったし……面倒だよな、試練の相手って」

 あのときはたしか、対峙する際の威圧感だけで死に続けていたんだっけ?
 今では結界の改良によって、少しはマシになれたと思うが……それでも、直接戦うとなれば勝てるヴィジョンが浮かばない。

「解析の方、進めておいてくれ。俺は一か八か──これを使うから」

《畏まりました。御武運を》

「ああ、分かってる」

 なんとなく重々しい空気を醸し出して、ポケットの中からあるアイテムを取りだす。
 長いチューブ、ポケットからその先端部分だけを伸ばして握り締める。

「放水開始!」

《水道解放──発射します》

「いっけー!」

 凄まじい勢いで、水が解き放たれる。
 ジェット噴射のように水が飛び、スライムの体に水が染み渡っていく。
 そして、その身体が──スパッと切れる。

「よっしゃぁ、どんどん行くぞ!」

 中にショウの剣を打ったときに使った星の鉱石? とやらを使っているんだが……かなりの硬度なのは間違いないな。

 石を混ぜ込んだのが正解だったのか、石の粒子が当たった部分だけは粘液として千切れるのではなく、そのまま水分を含んで熔岩となっていく。


 だが、スライムも負けてはいられない。
 再び超高熱で熔岩を融かすと、なぜかそれはマグマと化して合流を果たす……物理法則に喧嘩を売っているよな。

「だが、こっちが勝たせてもらうからな! 『SEBAS』、放水用意!」

《全ドローンの武器換装──完了しました。放水装置を作動します》

「いっせい消火だ!」

 スライムを包むように、至る所から水が放たれていく。
 スパスパと切り刻まれ、おまけに水まで含まされている。

 マグマが熔岩に干渉する前に、物量で押し潰す作戦だが……上手くいくかな?
 水やり感覚でホースを振りながら、そう感じてしまう。

 ──そもそもボスって、水を撒いて倒すってイメージが無いからな。


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