虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
当千の試練 その06
画面の中の白い人形たちは、少しずつ数を減らしていた。
組み込んだ武術のプログラムはそれなりに優秀だが、いかんせん体が追いつかない。
そのため範囲攻撃を回避することができずに──というパターンが確認される。
「そうか、逃げられないのが問題か。攻撃予測機能と即応機能を強化しておくべきだな」
《課題が見つかりましたね》
「ああ……『灰色』はどうなってる?」
《間もなく到着致します》
次々と人形が壊され、古代人を癒し続けていたドローンのポーション減少量が加速の一途を辿っていた。
身代わり人形としての意図が強かったし、それ自体はあまり気にはならない。
──そして、空が陰る。
一瞬上を見る古代人だが、擬似太陽が輝きその姿をハッキリと見ることはできない。
かろうじて人型であることは分かったが、複数落ちてくるため俺では無いと気づく。
「イッツ、ショータイムだ」
意味もなく指を鳴らすのと同時、空からの贈り物は大地に降り立つ。
人も魔物も一瞬戦いを止め、それが落ちた場所をジッと見つめている。
落ちた衝撃で発生した土煙の中から、四つの赤い光が放たれた。
古代人はいったいなんだと、その光が飛んでいった先を見れば──体に四つの穴を開けた、魔物が横たわる光景が目に映る。
◆ □ ◆ □ ◆
どういうことだとザワつく人々。
だが、土煙が晴れればすべてに納得できるだけの理由が現れる。
「……タビビトか」
先ほどまで、自分たちを庇いながら戦い続けた白い人形たち。
現れたのはそれらを少し大きくした、灰色の人形たちであった。
「杖? ということは、魔法が使えるか」
そこに居る二体の人形の内、片側はいかにも魔法使いが使っていそうな長杖を握り締めている。
隣の人形は杖ではなく二振りの剣を握り締めているため、前衛の双剣士と判断された。
『目標捕捉、標的──殺戮』
『了解』
二体の人形は互いにどこからか声を出し、情報を共有し合う。
そして、嵌めこまれた赤い石を爛々と輝かせ──魔物の元へ向かう。
「……は?」
そう、魔法使いのような杖を握る人形も前に進み出た。
その手に握り締めた長杖に魔力を注ぎ込むと、バチバチと奔らせた稲妻を直接魔物の体内へ叩きこむ。
『グギャァアアアアアァ!』
「魔道具……なのか?」
その問いに答える者は、古代人の周りにはいなかった。
ただただ、魔物が悲鳴を上げる声だけが辺りに撒き散らされ、その光景をずっと見ていることしかできない。
「そ、そうだ! 今の内に、俺も早く仲間と合流しないと!」
ハッとすると、そのまま後ろを振り返らずに走りだす。
それは人形たちを信用しているのか、それとも惨劇を見たくなかったのか……真実は、彼にしか分からない。
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