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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

当千の試練 その02



 映像の中で、古代人たちは健闘していた。
 強化された魔物たちを相手に、武器や魔法で抵抗を続けている。

「ふむ、なんだか俺が悪役のように感じられるな。この、なんとも言えない戦いを傍観している感じ……ボスっぽいな」

《悪の首領といったところでしょうか?》

「ああ、そう。そんな感じだ……おっと、ついに来ちゃったか」

 手元のボタンを操作し、対応するカメラを持つドローンが持つある装置を作動させる。
 するとそのカメラの中で、霧状のナニカが噴出された。

「やっぱり魔物の方が強い場合があるな。予め伝えておいたが、あんまり無茶はしてほしくないよ」

 レベルの高い魔物に挑み、ダメージを受けた古代人にスプレー状のポーションを吹きかけたのだ。
 原液はさすがにアレだが、それでも離れた腕を接着するぐらいの効能はある。

 魔物から受けたダメージに苦痛の表情を浮かべていた古代人だが、ポーションで癒えたことを知ってすぐに反撃に移る。
 槍を勢いよく突きだすと、それまでに受けたダメージもあって魔物は絶命した。

「俺には到底できないな。痛覚を遮断しているからできるけど、苦しいのにどうして戦い続けれるんだろう?」

《彼らには守るべきモノが背にあります。旦那様も家族が後ろにいれば》

「──ああ、この命が果てようとも抗い続けるだろうな。この世界なら、先に家族を転移させるか結界を構築してからか」

 痛みが何のその、たとえ体が千切れようと俺は家族が逃げるだけの時間を用意することになるんだろうな。
 現実だと……どうだろう、囮役の俺よりも子供が活躍する未来しか見えてこない。

「おっと、こっちもそっちもか……少し自動化した方がいいかもしれないな。それじゃあ『SEBAS』、さっそく頼む」

《畏まりました》

 映像の中で少しずつ傷を負う古代人たち。
 彼らの傷の程度に合わせ、『SEBAS』が的確な量のポーションをかけていく。
 ピッタリの量で施されるポーションは、彼らの傷を確実に癒していった。

「奥に行けば行くほど、強いのが多くなるのは定番だな。そしてそこには、明らかに禍々しい魔物が居ると」

 ドローンを飛ばして状況を見ているが、確実に今ダメージを負っている者たちでは対処できないような、強大な魔物を見つけた。
 もちろん、対処できる者は古代人たちの中にも居るが……全区画で現れているそれを、その少数精鋭では対処しきれない。

「となれば、俺の出番かな? ……というより、ドローンの出番なんだが」

 ただ、頼られても困るのでタイミングは探らせてもらおう……死者も傷者もいないのだから、それで勘弁してほしいよ。


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