虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
新たな城
「タビビト!」「久しい」「懐かしい」「元気か?」「遊ぼう!」「質問」……
「みなさん、戻ってきましたよ」
結果から言えば、彼らの居場所に変化は無かった……ただ、その居場所に変化はあったわけだが。
かつて俺は、彼らの居住区を天然の要塞と評したことがあった。
岩肌と木魔法を使ったカモフラージュにより、魔物から狙われることもあまりなかったらしいし。
「しかし、その……大きくなりましたね」
『頑張った』
「あっ、はい。ご立派なもので……」
かつて見た建物が要塞であるなら、今回のモノは鋼の城であろうか。
鋼は比喩なんだが、城周辺に生えた木魔法で用意したと思われる木々から死亡レーダーに反応があるみたいだし……絶対何かギミックがあるよな。
「タビビトの知恵、使った、できた」
「違う。使ってできた」
「なるほど。それで少し、見覚えのある物が置かれているわけですね」
お城の上では、反って向かい合う竜か蛇のようなオブジェクトが設置されていた。
現実にある物として考えれば、間違いなくシャチホコなんだが……この世界では一度として竜は出てきていないらしいので、おそらく蛇という可能性もあるのだ。
「タビビト。代表、待ってる」
「おっと、そういうことでしたら……すみませんが、お話はまた次の機会にでも」
そう告げると、俺の周りに集まっていた古代人たちは自分が居た場所に戻っていく。
子供が数人、それでもなお粘ろうとしていたが、年上の子に運ばれていった。
「タビビト、入るぞ」
「ええ、お願いします」
迎えに来た者の内、リーダーっぽい人が続けて案内を行うようだ。
先に伝えられていたからか、ゆっくりと開かれる門を見ながら……ふと思った。
(──なんで、アレを付けたんだろう?)
◆ □ ◆ □ ◆
「──監視と結界だ」
疑問に思ったことをぶつけてみれば、そのような返事が返ってきた。
玉座に座る彼の隣には、鋭い槍が立てかけられている。
「タビビトの置いていった紙には、そういった魔道具としての効果がある……と記されていたのだが」
「……ああ、たしかにありましたね。いえ、あれから私もさまざまな道具の開発に励んでいまして。一つか二つ、記憶より忘却されたモノがございまして」
「タビビトとて、人なのだ。そういったこともあるだろう」
彼こそが『代表』という名を先祖代々継いできた、古代人たちの文字通り代表だ。
なぜそのような名を? と尋ねられれば、世界を救うためという理由が解答なことを俺はすでに知っている。
話を戻し、例の魔物氾濫に関する件について訊いてみた。
すると──
「タビビト、この世界の危機だ。悪いが、共に闘ってはくれないか?」
「ええ、構いませんよ。ですがその前に、なぜそうなったのかが知りたいのです」
「……ああ、分かっている」
参加することについては問題ない。
その気になってもならずとも、後方支援であればバッチリできるからな。
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