虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
氾濫の可能性
「さすが、タビビト、旨いかった」
「……違う。旨かった」
「そう言ってもらえると、作ったこちらとしても幸いです。皆様に喜んでもらえるよう、工夫をできるだけ凝らしましたからね」
一度訪れた際に、正しい調理法などは調べてもらっていた。
前に【野生王】と食べたトビ料理同様、調理を完璧にこなさないと食べられないような魔物もいる……:DIY:様にかかれば、これらも簡単に捌けるけどさ。
「まだ誰も、勝てない」
「私の腕も、まだまだ捨てたものじゃないということですか。まあ何はともあれ、皆さまが無事に帰れることに安堵です」
「ああ、感謝する」
「感謝は不要ですよ。私たちは、同じ目的のために働いた仲ではありませんか」
実際、俺は損をいっさいしていない。
しいて上げるのであれば、料理に用いた一部の素材が減ったぐらいだが……養殖に成功している今、あまり問題ないんだよな。
前回箱庭を訪れた際に、さまざまな素材を集めていた。
香辛料をいくつか見つけたり、原初の生物の中に旨い部位を持つモノもいたんだ。
そういった奴らを回収をし、増やすことで貿易事業にも発展をもたらしているぞ。
閑話休題
「ああ、ところで代表さんはいかがなさっているんですか? 今回は彼に、お土産も持ってきましたが……」
「代表は、仕事、忙しい」
「仕事? もしや、何かあったのですか?」
「魔物たちが、溢れるを、止めない、危険」
魔物たちが溢れる……ダンジョンものとかによくある、いわゆるスタンピードというヤツだろうか?
この箱庭世界は区画が分けられており、彼ら古代人は北の区画に住んでいた。
他の区画には、古代生物風の魔物が生息しているのだが……そうか、ソイツらって溢れることもあるのか。
「それじゃあ、少し遅れたのも」
「そうだ。現れたの、倒す、してた」
「倒してた、だ」
「なるほど、しかし……戦う必要は無くなったと言っていましたが」
だから格好も変わった、そう考えていたんだけどな。
「戦いたくない者、必要なくなった」
「けど、守りたい。だから、戦う」
「なんと……それは素晴らしい」
要するに、非戦闘員という存在がしっかりと確立したようだ。
全員が戦えるようにせずとも、技術は発展している……だがそれでも、家族を守るためには誰かが魔物と戦わなければならない。
この世界に居る限り、それは決して変わらない法則の一つだろう。
「……そろそろ、行く」
「ええ、今度は結界でもお渡ししましょう。魔物から逃れたり攻撃を防ぐことができる便利な品ですよ」
「ありがたい。さすが、タビビト」
「いえいえ、皆様のお役に立てるのであればそれで充分です」
そして、俺は彼らに案内されて集落へと向かうのだった。
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