虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

古代人の発展



「久しいな──タビビト」

「ええ、あれからかなり時が経ちましたね」

「タビビトは何も変わらぬな」

「そういう皆さんは……変わり、ましたね」

 俺を迎えに来てくれたのは、数人の古代人の皆さま方だ。
 頭に骸骨を被ったり、血化粧をしたり、意匠が大胆だったり……原始人みたいな姿をしていたはずなんだが。

「戦う必要、無くなった。タビビト、技術、真似てみた」

「ああ、私の置いていった資料を活用してくれたのですね……ありがとうございます」

「ありがとう、こっちの言葉。タビビトのお蔭、みんな快適」

 植物や動物の素材を用いて作られた衣服を身に纏い、彼らはここに現れた。
 原始人っぽい装飾品は存在せず、なんだか文明が発達したように思える。

「それはそれは。私はただ、生きるためによりよい環境を築くヒントを置いていっただけですよ。それを用い、実際に活用したのは皆様です……私ではありません」

「だが、しかし」

「──いいんですよ、それで。使われない情報など、覚えていても価値はありません。それよりも誰かに使ってもらえることこそ、芯に意味があったと言えるのです」

「タビビト……」

 実際問題、俺の技術は:DIY:によって急速な発達を遂げすぎているからな、
 使おうとして使われなかったものも多く、どうにも悩んだものだ。

 そして何より、観てみたかったんだ。
 古の時代に生まれた古代人たちが、天然の要塞を築き上げるほどの知恵者たちが、いったいどこまで文明を発達させるのか。

 実際、かなり期待できる気がする。
 迎えに来た者だけがこの格好、なんて悲しいオチではないだろう。
 少なくとも、衣服に関しては確実に進化しているようだしな。

「ところでタビビト……その、あれだ」

「ええ、分かっております。お土産の品を用意しているのですが……少々数が多すぎてしまいまして」

『!』

「よろしければ、これらが皆様方のお口に合うかどうかのテストに協力をしていただけると幸いで……お早いですね」

 ここぞとばかりに魔法を使い、スペースを確保する古代人たち。
 彼らは進化の中でなぜか木魔法を発現させているため、テーブルや椅子などがすぐに用意されていく。

 というか、魔法自体かなり使えているな。
 木を拾いに行くこともなく、木魔法で生みだした木の水分を抜くことで枯れ木として代用もしているみたいだし。

 燃える、という概念をアイテムにした俺の薪とは全然やり方が違うや。

「それでは──試食会を始めましょう」

 喜んでもらえるといいのだが……そう思いつつ、俺は食べ物を配っていった。


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