虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

バトルロイヤル その09



「おっと、初めての被害者かと思ったら初心者だったか……そりゃ仕方ない」

《旦那様、こちらを》

「ああ、これは見事にやられてるなー」

 内部カメラがしっかりとお城まで映像を中継してくれるため、暇潰しにはもってこい。
 プレイヤーたちが俺のロボット兵相手にどこまで戦えるのか、それを調査していた。

「死神様との試練が長かったせいか、同時期に始めたプレイヤーはだいぶ成長してたからな。ここが何かあったんだろう」

《……初期のイベントを探ったところ、経験値量を上げるといった内容のものが存在しておりました。おそらくはそれかと》

「うん、というかそれしかないな」

 レベルの爆上げに成功した結果、圧倒的差が生まれてしまったのか。
 話を聞いてみれば、以降の初心者は一定レベルまで経験量が増える称号やアイテムを貰うことで上げているようだ。

 俺? キャンペーン中に何もしていなかった、バカ野郎として扱われているだろうさ。
 あるものは創れる:DIY:だけど、レベル上げをやっても増えるのは魔力MP器用さDEXだけだしな……正直悩む。

「まあ、そんな俺でも殺れました。といった感じで売り込めば売れそうだがな。もちろんコイツらは、国の防衛力としてのキープしかしないけど」

《旦那様は無欲ですね》

「無欲? おいおい『SEBAS』、お前が一番分かっているはずだろ。欲があるからこそ、俺の選択はこうなんだって」

 もちろん、『SEBAS』も俺が退屈しないように話の種として、あえて言ってくれたということは分かっている。
 そのことに感謝を内心でしつつ、そのまま会話を続けていく。

「他者を犠牲にしてロボの実験、初心者は残しているが……これは、今後の分が無くならないようにするため」

 映像の中で逃げ惑う奴らを観ながら、少しだけ思う。
 俺が普通のプレイヤーで、逆にああなっていたらどうなるのかを……死ぬな、うん。

「抗える者は極少数、倒せたとしても無限に湧き出るこいつらは止められない」

 一機、また一機と倒されていく。
 そのたびに二機、四機と数を増やして地上へ降りるロボット兵。

 数が増えれば被害が増え、俺の下にたんまりとポイントが注がれることだろう。

「それを単独犯でやっている……ずいぶんとまあ、怖いお父さんだよ」

《ご家族の皆様がたは、一人として死なれておりませんが》

「あっ、うん。そこは普通に強いし、当然信じていたさ。俺なんかと違って、ちゃんとした理由があるわけだし」

 少し話が逸れたな。
 ゴホンと息を吐いて、話を戻す。

「人間生きてく限り、無欲であることなんてほぼ不可能だ。神に感謝する敬虔な聖職者であろうと、究極的な話飲まず食わずで寝ずにいることなんてできない……できたとしたらそいつは、もう人じゃないだろ」

 欲望があるからこそ、俺たち人類はこんな技術まで生みだしたんだ。
 それは否定しないし、しちゃいけない……何の話だったんだっけ?


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