虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
バトルロイヤル その06
さらに数日が経過したが、天空の城とそこに住まう俺の存在に気づく者は居ない。
俺もなんだか気が抜けて、創っておいた最高級の家具に包まれた豪勢な生活を悠々としていた……周りが血みどろの戦いをしているというのに、俺ってば結構やるよな。
「うーん、旨い」
今日もまた、自家栽培に成功した緑茶を啜り心を落ち着かせる。
なんともまあ驚きだが、妖界で緑茶が育てられていたのだよ。
そのためアイプスルでは、コメと緑茶と大豆とかなりジャパニーズな品々が栽培されている……大豆はあれだ、とある隠れ里で貰った品である。
そんなこんなで今日も俺は、優雅なひとときをお城で過ごしていく。
なぜなら、とても退屈だからだ。
「そうだよなー、分かってても対処できるものじゃなかったか……」
すでに半分の日程が過ぎている。
運営側は中間報告と称して、どれだけのポイントを隠した状態で順位と名前だけを全休人たちに開示した。
「一位が文字化けした奴で、しかもそれが仕様ですとまでやられればずいぶんと怪しく感じるよな」
《隠蔽能力には念を入れましたので》
「まあ、俺も目立って暗殺なんてオチは……そうだ、『暗天』なんて人もいたな。二枚目の招待状もまだ書いてなかったし、何かいいアイデアを考えとかないと」
招待状を全員に送ったが、家族もすっかり忘れているぐらい昔のことだ。
速くやらねばと思ってはいるんだが……どうにも機会が無くてな。
何より、家族とこっちの世界で会う時期を狙おうとしたのが不味いのかもしれない。
そんなこと……ではなくかなり重大なことなんだが、まあ気にしていてはいつまで経とうと行われないだろう。
「覚悟を、決めるしかないんだろうな」
《では、行われますか?》
確認を『SEBAS』がしてくるが、まだかなり悩むところだ。
正直に言って、再会するならやっぱりいいシチュエーションで……という男のロマンが疼いているんだよ。
それに、ルリが本気を出せば因果なんて関係なくアイプスルに迷い込んで来ることだって可能だろうし、それが起きないということは時期尚早である証拠でもあった。
「まあ、誰一人としてやりたいって言ってるわけじゃないからなー。よし、フィナーレで大々的に宣伝しよう。『SEBAS』、これから頼むプロジェクトについて、いくつか意見が欲しい!」
《畏まりました》
急にあることを思い付いた。
特に意味なんてないし、これによって何がどうなるというわけでもない。
ただ、『◯天』の者たちがどういう反応を示すかが気になるんだよ……家族を除く。
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