虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

バトルロイヤル その05



 それから数日が経過した。
 ウハウハするほど金銭が溜まったのだが、やはり武器の力だけでは勝てないような強者はいるわけで……少しずつではあるが、売れ行きが落ち始める。

 よくあるよな、サブカルでもそういう純粋な力に負けるパターン。
 俺はその展開に当て嵌めれば、主人公の関係者が溺れた武器の作成者──つまり悪人として裁かれるわけだ。

「まあ、ここまで来れるならだけどさ」

 天空の城も改良を重ね、本来の亡国でもできなかったことができるようになった。
 なんせここは、ファンタジー世界でもある電脳世界……そのテクノロジーがあれば、たいていのことはできる。

 まずはロボット兵、少しフォルムを弄ったのだが──無限に造れるようになった。
 これは神代魔道具を使うことで、あっさりと工場として運用できたぞ。

 これで『人がゴミのようだ!!』を言うことができるし、プラズマの改良も済ませているため『見せてあげよう』などと言って雷を放つことも可能だ。

「最高のショーだとは思わないけどさ」

 数日の間に手に入れたポイントで、おそらく上位入賞ぐらいはできているだろう。
 一度も戦闘せずに入賞できるというのは、生産者だけの特典だな。

 だからこそ、わざわざ殺戮に手を染めてまで何度も雷を放つつもりはない。
 悪行を重ねれば場所もバレることになり、転位装置の妨害をしていようとも誰かしらが上に登ってくるだろう。

 そしてそれが家族であることを、俺はまだ望んでいない。
 非道によって再会するのも、まあサブカルみたいで憧れはするけどさ。

「『SEBAS』、状況は?」

《転位装置の置かれていた遺跡に、ロボット兵の配備が完了しました。ロボットのみの転位だけが可能で、それ以外の者はすべて例の場所に移動する……合っていますか?》

「ああ、それでいい。ついでに言えば、証拠隠滅の方もバッチリやっておいてくれよ」

《畏まりました》

 転位装置そのものを隠すこともできなかったので、できるだけの策を拵えて待ち構えることにした。
 城を包むように結界も張ってあるし、今はまだ俺以外の『超越者』は休人プレイヤーの中には存在しない。

「いつか来たときが問題だよな。俺とは別の情報源だし、そこから関連性を引っ張られれば本当に厄介だ。『SEBAS』、本当にまだいないんだよな」

《はい。反応はございません、それもすべての探知機にです》

「なら大丈夫……なのか?」

 心配のしすぎも気苦労になるだけか。
 それならもっと、楽しんでイベントに向き合った方がいいかもしれないな。


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