虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
バトルロイヤル その03
「──と、いうわけで安全地帯を探さなければならない。『SEBAS』、状況は?」
《現在捜索中です。非殺傷結界が本来安全地帯となる場所の前提条件でしたので……》
「ああ、そういえばそうだっけか」
非殺傷結界──中に居る者が受けたダメージを別のものに変換することで、内部での殺人を防ぐ結界だ。
だが俺は逆にそれのせいで死に続けてしまうので、対策が必要なのである。
「まあ、術式が同じで幸いだったよ。中和の魔道具、作って正解だった」
そこで編みだしたのが──非殺傷結界の効果を無効化する魔道具。
普段から使っている結界の魔道具に作用する追加オプションで、取り付けると結界を展開している間だけ、非殺傷結界の効果を無視できるという仕掛けだ。
「それまでに死に続けているときは、その場で死に戻りをして誤魔化していたからな……ずっと薄く光ってたんだっけ?」
初めの頃、それで守衛さんを驚かせてしまうこともあった。
今では門を潜ることもないため会うこともないが、詫びの品を追加で送ってみるのも悪くないかもしれない。
「そして死神様によって『超越者』にさせられ、『生者』の名を冠した……まあ、お蔭で死に戻りは楽になったけどさ」
あくまで非殺傷結界がある場所でしか使えなかった魔道具の力を、どのような場所で行使できるようになった。
死んでも場所を選べるようになり、その気になれば死亡転移……なんてこともいちおうは可能となっている(セーブ石のが置かれている場所限定)。
《旦那様、発見できました》
「よし、それじゃあ行きますか!」
改造した転位装置の座標を指定し、発見した安全地帯とやらに移動する。
まあ、やるべきことは簡単だ……俺も少しぐらいバトルロイヤルに参加したいんだよ。
◆ □ ◆ □ ◆
「バカ売れだな、本当に」
《旦那様のアイテムですので》
忙しい今を生きる者たちのためなのか、露店などは存在していなかった──その代わりに、自動販売装置なんてものがあるから驚きである。
とは言っても、地球の見てくれをそのままパクったわけではなく、通りに巨大な箱型の魔道具が並べられているのだ。
その中に自分の売りたいアイテムを入れておけば、それを誰かが買ってくれる……いわゆるフリマみたいな感じの仕組みである。
箱に金が入ればメールとしてそれが振り込まれ、即座に販売者の下へ利益が届く──どうしてファンタジー世界なのに、ここまでハイテクなんだろうか。
「そして、俺はかなり儲かってます」
わざと時間で劣化するようにした高品質なポーション、試作品の武具、便利なアイテムの数々……製作者の部分を隠して販売しているのだが、出した途端に誰かが買っていく姿は実に心がほっこりする。
箱は一度使用すれば、一定時間が経過するまでそのプレイヤーしかモノを入れられなくなるのだが、どこからでも入れることができる優れものだ。
なので離れた場所から品を入れ、一喜一憂するプレイヤーにニヤリ……なんてことも可能となる。
──原価を考えれば、売ってる商品ってほぼ百均感覚で充分なんだけどさ。
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