虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
バトルロイヤル その02
「まあ、こんな感じかな?」
最上層だけをリフォームしていたが、地図で場所を把握してからは『SEBAS』のお薦めに合わせて重点的に修理を行っていく。
ゲームでバトルロイヤルと言えば、基本的に何でもありがルールの華だ。
今回のイベントも細かいルールは撤廃されており、主だった規制は存在していない。
そして何より、舞台となったフィールドを好きなように使っていいとのことだ。
まあ、普通は洞窟ごと爆破とか水に毒を盛るとかそういう考え方を持つ過激派のためのルールなんだろうけど。
だが俺のように使えるものがたくさんある場所に飛ばされた奴は、きっと別の考えに辿り着くだろう──あっ、フィールドのギミックって使っていいんだ、と。
「さすがに石が壊れてたら、もうどうしようもなかったよ。いちおう指示通りに直してはみたが……作動するか?」
《状況確認──完了。作動いたします》
淡い青色に石板が輝くと、小さくこの島が揺れ動きだす。
同時に宙に浮いた巨大な石が強烈な閃光と共に活性化し、常に光の膜を纏いだした。
「起動、したな」
《はい、旦那様のお力です》
さらに言えば、危険物であるプラズマ生成装置は予め修理してある。
構造を解析するチャンスだったし、何より男のロマンをくすぐったからだ。
「王女と機械工の少年が居ないのだから、滅ぼそうにも止められない……まさに俺は、この城の王として君臨したのだな!」
誰もが一度は憧れる天空の城。
そして少しはなってみたいと思う、悪役側の立場。
彼の成せなかったことをいま、俺が代わりにやっていると思うと……かなり緊張する。
「まあ、雷を落とす気はないけど」
《落とされないのですか?》
「仮にやるとしても、それは一番最後にしておこう。全員を同時に屠ったら、それはそれで大量ボーナスだろうし」
それよりも、ショウやマイ、ルリに及ぶであろう影響を考えなければ。
あの世界よりもよりファンタジーのこの電脳世界であれば、まあなんだか雷もどうにかできそうな気がするけどさ。
《畏まりました。旦那様のご意向が無い限りは、使わないことにしましょう》
「そうしてくれ。あと、あれから派遣したドローンの方はどうなってる?」
《下の状況もある程度把握できました。すでに戦闘は始まっているようで、死に戻りも確認されています》
「なんだ、できるのか……デメリットはありそうだけど」
訊いてみればその通り、死ぬと物凄く減点されるらしい……点数制だったんだ。
バトルロイヤルだが直接殺し合う必要はなく、生産者であれば己が作り上げたアイテムが勝敗に関わった場合、その貢献度によってポイントが一部流れてくるんだとさ。
──ずいぶんとまあ、俺に優しいイベントなんだな。
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