虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

バトルロイヤル その01



「──バトルロイヤルか」

《左様にございます。参加者は至る所へ転送され、遭遇した者と闘う仕組みだそうです》

「なるほど、それで俺は謎エリアに飛ばされたわけか……」

《中立地点なども存在し、基本的に民が居る場所がそこに該当するとのことで……》

 ふむふむと『SEBAS』の説明を聞きながら、辺りを見渡す。
 暇すぎて:DIY:を使って修繕作業に励んでいたら、かなり元の状態に近いところまでリフォームに成功した。

「それで、俺の他に周囲にプレイヤーは?」

《いえ、おりません》

「…………今回のイベントは?」

《バトルロイヤルです》

 誰と、誰と闘うんだよ俺は!
 そうだよね、秘境に飛んだ狩人は結局やることを終えたる降りる必要があったね!

「ああっと、そうだ。ここに来る手段はそれでもあったんだろう?」

《はい。通常の方法ですと、旦那様が修理なされた転位装置で……強引な方法ですと、飛行することで来ることが可能です》

「だから転位装置にはジャミングをかけておいたし、空を飛んでの来訪もできないように小細工はした」

 装置の方はともかく、無理な侵入を妨害することはできない。
 あくまで竜の巣のように、できるだけ拒むのが限界だ。

「お父さんみたいに入ってくる奴がいるだろうし、来た奴は歓迎しよう」

《今後はどうされますか?》

「バトルロイヤルってルール上、俺が死んだらどうなるか分からない。とりあえずは安静に、結界でここら一帯を包んでおこう」

《畏まりました。すぐにドローンを派遣、島一帯を支配します》

 あっ、うん。
 やっぱり島だったんだ……なんとなく、来たときから予想はしていたけどさ!

「しかしまあ、お空がずいぶんと近いな。天国にもっとも近い場所、なんて宣伝文句もできそうなスポットだな」

《──占有完了しました。旦那様、地図を展開してもよろしいでしょうか?》

「ああ、タブレットに出してくれ」

 神代魔道具が生みだしたタブレットは、何度も『SEBAS』の改良を受けることでプレイヤーの権限ともリンクした……そりゃあもう便利な品となっている。

 誰かに見られると困るので、まだ家族にも渡していないが……直接会ったそのときは、サプライズとして渡す予定だ。

《送信完了しました》

「……運営、できるだけ寄せてきたな。地下まで再現してんじゃねぇか」

 小島らしく、あそこまでの壮大さを再現することはできていないようだが、俺の足元に大量殺戮兵器がセットされていることに間違いは無いようだ。

 ──滅びの呪文、先に探しておいた方がよかったかな?


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