虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
話題のゲーム
広大な世界での冒険は少し休憩。
ログアウトした俺は、のんびりとリビングのテレビを見ていた。
『今話題のEHO、その人気の秘密について迫ってみようと思います』
どこもかしこもEHO。
他の追随を許さない破竹の勢いは、ゲーム開始から数か月が過ぎても今なお続いくものだった。
ここまでの人気になると、誰が予想しただろうか……いや、ほとんどの者は最初からそうなると分かっていただろう。
夢の技術VR、それを用いられて造られた初のVRMMOなのだから。
「けどまあ、そのうち現実逃避したくなる奴も現れるんだろうなー」
「それはもしかして、アナタ自身のことだったりして」
「愛しい妻と可愛い子供たちが居て、そんな台詞を吐くほど腐っちゃいないさ」
「あら? てっきり私は、アナタがアッチの世界でも若い女性をあの手この手で絡めているのかと……」
神に愛された瑠璃の幸運がそれを祈れば、たしかにそんな事態になることも可能かもしれないけどな。
「そう言う言葉は翔のために取っておいてやれよ。実はな、最近女性に渡すプレゼントについて訊かれてな」
「まあ。今夜は赤飯かしら?」
「気が早いぞ。さすがに俺と瑠璃の馴れ初めは聞き飽きたと言いそうだったし、無難なプレゼントをお薦めしておいたよ」
少しばかりおかしいプレゼントの渡し方をしたのが、俺と瑠璃の懐かしいエピソードの一つである。
スーパーラックの瑠璃を狙う男たちと闘い手に入れたプレゼント、それを渡すまでの話はとても厳しいものだったのだ。
「最近は会議もやらなくなったな……まあ、俺がずっと神様の試練で拘束されていた辺りから距離感が生まれてたけど」
「アナタだけやっているゲームが違っているかと疑うくらい、おかしなことをしているからよ。驚いちゃったわ、神の存在が云々と揉めているときに、アナタがそんなことを言っちゃうんだから」
俺の情報から、瑠璃はそのときの地位を一つ上に上げることに成功したらしい。
偶然、じゃないんだろうな……なんらかの干渉による必然だろ。
「久しぶりに会議をやりたい、と言ったとしてもさ……何区画まで行った?」
「区画はあまり進んでないわよ? いろんな人を救うために、孤児院を建てたり配給をしたりで大忙しなんだから」
「そうだよな……レベルが違ったわ」
けど、それでも俺の知らないEHOの世界について知りたくなってきた。
今日か明日にでも、ぜひ情報の交換会をやろうと子供たちにも言わねばならないな。
「それじゃあ瑠璃、頼んだぞ」
「ええ、お任せあれ」
ガシッと繋いだ互いの手。
特に意味は無いが、ノリと気分でそんなことをした俺たちであった。
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