虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
野生王 その14
相手が誰であろうと、ツクルの行うことは基本的に大差ない。
作りだし、造りだし、創りだした魔道具を駆使して可能な限り死なないように尽力するだけだ……ただその数が異常であっても、問題ないというのが彼の力だが。
「先手必勝──って、は?」
「いえいえ、それは遅いですよ」
相手はさまざまな猛者たちを認めさせるほどの弱者にして強者、【獣王】は開始早々攻撃を仕掛けることを選んだ。
たとえそれでも闘いは続く、そう思っての行動だったが──『生者』の行動は彼女の想定をはるかに超える。
それは突然のことだった。
凄まじい勢いの風が吹き荒れ、【獣王】の足を一瞬ではあるが地上に縫い止める。
そしてそれを起こした諜報人、『生者』はと言えば……
「知ってますか? 古来より、天からの攻撃は地上で一人一人を倒していくよりもはるかに効率の良いものなんですよ?」
「……今の風で飛ぶほど、『生者』ってのは軽かったのか」
「指向性の風でしたので──やれ」
いつの間に召喚したのか、宙には駆動音を鳴らす無数の機械が散らばっている。
そのすべてに設置された機関銃、銃口の矛先は【獣王】だ。
「へっ、つまらねぇな」
魂の籠もらない機械にニヤニヤと笑みを浮かべ、ストレッチを始める。
耳はその最中も真っ直ぐに立ち、挙動のすべてを聞き逃そうとはしない。
そして、放たれる銃弾の雨。
かつてこれを受けた帝国の者たちは、逃れることもできずに撃たれ続けた。
「甘いんだよ!」
高速で動きだす【獣王】は、加速と減速を自在に切り替えることで銃弾を躱していく。
対処など回避のみで充分、そう言わんばかりに迎撃はいっさいしていない。
「ハッ!」
そして力強く地面を踏み込み跳躍する。
ツクルの言うところの兎耳族である彼女の跳躍力は高く、上空まで風に煽られその後はドローンで宙に居続ける彼の元まで瞬時に辿り着く。
「無駄です……二射目、撃て」
「無駄かどうかは、俺が決めるよ!」
そして、何もない宙に脚をぶつけ──勢いよく蹴りつける。
なんとなく知識からそれを察していたツクルは、ドローンから降りて回避を選択。
その光景に舌打ちしながらも、【獣王】は辺りの機械を破壊していく。
「逃がすかよ!」
「いえ、そうさせてもらいますよ」
機械に乗り、【獣王】の追撃を回避していくツクル。
ドローンたちの攻撃はいっさい通じていないものの、それでも策はあるのか変わらず同じ戦法を取り続ける。
そして数分、そのやり取りを続けると──
「【獣王】様、勝てば何をしてもいいんですよね? 少なくとも臣下の皆様はそう仰ってくれました」
「まあ、別に構わないが……いったい何をする気だ?」
「見ていてくれれば分かりますよ」
そう言って、ポケットの中からある物を取りだした。
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