虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
野生児 その06
N5W4
「──うーん……見たこと、ある、ぞ?」
再び緑が広がってきたその場所で、ついにヤーはそんなことを言いだした。
フィールドの入り口に入ったばかりで、その先には──渦巻くキューブがある中。
「そうなのですか?」
「気配が似てる。けど、少し違う?」
「……きっと、アレのせいでしょう。私のような者が居ると現れます」
そう言って、キューブを指し示す。
それ以外の理由が特に思い浮かばないし、違うのであれば勘違いだったのだろう。
ドローンを飛ばして調査には向かわせているものの、キューブのせいで奥には向かえていない……倒すしか、ないのかな?
「ヤー君、少し休んでいてください」
「せーじゃは、どうするんだ?」
「少し、淀みを晴らしてきます」
「なら、手伝うぞ!」
これまで単独活動しかしてこなかったわけだが、当然このゲームにもパーティーシステム的なものは存在していた。
こちらの世界の者ともそれは可能で、さまざまな便利機能が使えるようになる。
──王の職業持ちは使えないみたいだが。
何か特別なシステムがあるようで、申請も自動的に弾かれるようになっている。
予めなるかどうかを訊いてみたんだが、できないと言われていたので……きっとそういうことなのだろう。
「いえ、私だけで行います。ヤー君は参加できないらしく、戦いが始まれば結界でその場から追いだされますので」
「そう、か……分かった」
「先ほどヤー君が倒した魔物であれば、すでに調理しておきました。ヤー君に渡しておきますので、それでも食べて待っていてくだ」
「──分かった!」
ずいぶんとイイ返事だ。
というか、その言葉を聞きたかったのではないかと疑ってしまうな。
◆ □ ◆ □ ◆
「まっ、それでもやるんだけどさ」
遠く離れた場所で、ヤーは食事をしながらこちらを見ている。
一挙一動を監視され、少しばかり気が重いのはなぜだろう。
「……というか、最近は縛りプレーが多い気がするな。なんでこう、思う存分力が振るえる機会がないんだろう」
《どうなさりますか?》
「遠隔狙撃もバレるだろうし、また何か別の方法でどうにかするしかないんだろうな。誰かの動きを再現して、結界を纏わせてぶん殴ればそれでも倒せるだろうし」
《畏まりました》
キューブは前に見た時と同じように、脈の蓋をするように配置されている。
ヤーが違和感を感じたのは、おそらくそれが原因なのだろう。
「淀みをどうにかすれば、ヤーはここが正しいのかどうかを判別できる。違っているのであれば、一度場所を変えるかな?」
《ドローンの活動範囲を増やせますので、一度調査を行いましょう》
「ありがとう。なら、結果が分かるまではもう少し西に、次のスポットに当たったなら一度東に向かおう」
なんてことを話しつつ、俺はマジックハンドを動かしてキューブに触れた。
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