虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
野生児 その04
休憩中、俺たちは料理を食べている。
「うまー!」
「焼いて食べるにも、工夫があるんですよ。他には揚げる、煮る、炒めるなどそれなりにレパートリーが」
「──食べる!」
トビは大量に墜ちてきたので、せっかくなのでと焼きトビにしてみた。
鳥獣保護法やら何やら面倒な日本とは異なり、この世界でならあらゆる物が食材と化すわけで──
「では、唐揚げにでもしましょう」
注意点として、猛禽類は不味い。
肉食系の動物のお味がアレなこともあるんだが、通常の方法ではまず美味しいという感想が出ることは確実に無いだろう。
「しかし、魔道具って便利ですよ……」
さすがファンタジーグッズ。
筋を解し、臭みや中身の洗浄まで行ってくれるのだから心配は要らない。
すでに焼きのトビを気に入ってもらえているように、それなりのお味となっている。
「それを片栗粉に付けて……揚げるっと」
物凄く雑だが、:DIY:が補正をかけて絶妙な量の片栗粉に肉を浸す。
適温となった油に投入した唐揚げは、揚げ物特有のバチバチという音を立てて、少しずつ色を小金色に変えていく。
絶対に、真似をしてはいけません。
地球だと美味しくないこと間違いなし、こちらの世界でも肉食系の魔物の肉は特殊な調理法を習得した者でないと行えないらしい。
俺も:DIY:の補正があっても、現実で試そうとはこれっぽっちも思わない──まさに魔法のような技術でも開発されないと、トビ料理は無理だな。
「では一つ……うん、大丈夫ですね」
「せーじゃー、早くー!」
「ええ、今持っていきますよ」
そもそも【野生王】は胃袋の方までバッチリ強化されているからこそ、トビを食べつくすことができるのだろう。
今も豪快に唐揚げを食べているんだが、本来であれば血肉を貪るようにただ血を焙っただけのトビ料理(?)を食っていたのだと本人が言っていたし。
「ヤー君、君は魔力で胃袋を強化でもしているのかな?」
「ん、そう、かな? たぶん、できる」
食べながらなので区切っているが、それでも滑舌よく話しているのは口に入れた唐揚げがすぐに消滅するからだ。
小型のブラックホールか? いいえ、わんぱくキッズの胃袋です。
「腹に、魔力、グルグル、できる」
「そ、そうですか……参考にしますね」
「お代わり!」
フードファイターが修業を重ねれば、もしかしたらスキルになるかもしれないな。
身体強化の補助魔道具の作り方は分かっているし、胃袋限定に働きかけるものを試してみるのも一興かも。
──まあ、それより今はトビ料理を作ることに励みますか。
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