虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
野生児 その03
N5W2
「てぇいりゃぁぁ!」
先ほどまでとは打って変わり、このフィールドは草木が生えられない荒野だった。
乾燥したそんな大地を【野生王】は駆け巡り──凄まじい速度で天に跳ね上がる。
「ごはーんっ!!」
空を舞うトビっぽい魔物の背中に張り付くと、一発殴ってまた別のトビに……といった動作を繰り返し行っていく。
するとトビは全部墜ちる、最後のトビだけは威力を調整して地表に落ちる間空気抵抗を行わせていたので着地もバッチリそうだ。
だがまあ、何もしないというのも少し悪い気がしてきた。
「風ならこれだな──『風起の布袋』」
取りだした袋の紐を少しだけ緩めると、そこから優しい微風が吹いていく。
目的地は【野生王】の着地地点、しっかり『SEBAS』が演算したので──問題なくそこへ足を着ける。
「すごい、せーじゃ! どうやった?」
「この魔道具の力ですよ。紐を緩めると、緩めた分だけ風を吐きだす魔道具でして……試してみます?」
「うん!」
キラキラした瞳に負けて、俺はこれまで使用していた袋──とは別の物をポケットから出して【野生王】に手渡す。
疑問に思ったのか、どうして渡さなかったのかとそれぞれを袋をチラチラ見ている。
「これは私にしか使えない、そう設定した魔道具なのです。ですがそちらは、誰でも使えるように改良した品です。試してありますので、ちゃんと使えますよ」
「そうか!」
嬉々として俺から離れた場所へ向かい、我慢できないとさっそく実験する【野生王】。
そんな様子にほっこりとして……表情を直すと、『SEBAS』へ連絡を行う。
「(野生の王だけあるし、五感が冴えている可能性があるから思念で会話するぞ──能力の方、どうなってた?)」
《はい。自然がある場所での感覚の鋭敏化、また身体能力の増大などが確認できました》
「(ありゃりゃ、予想通りってか。けど、子供が王となる条件を満たしているってのも結構凄いよな。『錬金王』はしっかりとした過程があるから、まだ理解できるけど……)」
《年齢も見た目通りでしたので、長寿の種族ではございません。さすがに転職条件を暴くまでは……申し訳ございません》
まあ、これまでの行動が全部演戯の高齢者というのも少し怖いからいいんだよ。
野生の王、それが必要とする条件……しかも少年でもできるようなこと。
「全然分からないな」
「何が分からないんだ?」
「いや、その鳥をどうやって食べるかってことが気になってな」
「焼いて食う!」
そりゃあなんとも、シンプルな調理法で。
生だと危ないことは分かっているようで、何よりでございますよ。
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