虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
VSタックルカウ
N5
癒しのスポットは終わり、再び闘争に明け暮れる日々が戻ってくる……なんてこともないんだが、とにかく次のエリアに移動した。
N5は森を抜けた草原フィールドとなっており、なだらかな丘があるなどN4同様に落ち着くような場所である。
「ただし、魔物は襲ってくる」
牛のような魔物だった。
鋭い角が捻じれている、血走った目をした一直線に突っ込んでくる魔物。
その速度は凄まじく、『SEBAS』が予め伝えてくれなければ、自分の目で確認してからの回避行動で間に合わずに轢かれることも多々あるほどだ。
「ドリルの牛? それとも、突撃する牛? いずれにせよ、いいタックルじゃねぇか」
《『突撃牛』でございます。あの速度での移動は脅威ですが、一直線にしか行えませんのでご安心を》
「そこら辺は変わらないんだ。赤い布でもチラつかせたらよかったのか?」
まあ実際、赤くなくても布は成立するらしいんだけどな。
闘牛でそれが使われるのは、あくまで赤色がイベントの空気に合うからだそうだ。
大切なのは、布がヒラヒラと揺れ動く姿を牛が認識できるかどうか。
そして布は、エウストで大量に買い揃えてあった──
「さぁ、闘牛の始まりだ」
『『『『MUOOOOO!』』』』
「……あれ?」
わーい、ぼくってにんきものー。
じゃなくて、大量の牛がいっせいに俺の元へ迫ってくる。
「ちょ、ちょっと待っ──」
『『『『MOOOOO!』』』』
当然、牛が俺の助命なんて聞いてくれることもなく、ヒラヒラと揺れる布ごと俺を踏みつけて通りすぎていく。
「……痛たたたた。布が気に食わなかったのか? それとも、また別の理由か」
《旦那様は肉体的に虚弱ですので……草食の魔物であろうと、溜め込んだストレスを発散したかったのかと》
「そんな理由かよ。いやまあ、分かると言えば分かるけどさ」
蹂躙される側からする側へ、その快楽はかなりのものだろう。
気分転換にゲームセンターで遊ぶように、きっと牛たちも俺で遊んでいたんだな。
「──なんて、綺麗な纏め方で終わらせてたまるかよ! 『SEBAS』!1」
その叫びに呼応するうように、ドローンがいっせいにこの場へ出現する。
その数──二十、用途は多々あるがそのうち十台が攻撃用のドローンだった。
「数匹、俺に痰を飛ばしやがった! 黙って許せるほど、俺はゲームでは大人をしていないんだよ──半殺しだ!」
《畏まりました──全弾掃射》
それ以降は語るまい。
無慈悲な雨が牛たちを襲い、命乞いをするかのように高い声で哭き叫ぶ。
──殺さなかっただけ、感謝してもらいたいよまったく。
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