虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

満載なフラグ



 始まりの街

「久しいな、『生者』よ」

「……なんだか、ずいぶんと慣れたものだ」

「私と『生者』の仲だろう? そう、気取った態度を取らずともよい」

「いや、全然違うからな。というか、どうして俺が来ると分かった」

 毎度お馴染み、『騎士王』様が焼き串屋に居た俺の元へ現れる。
 これまたいつも通りに焼き串を注文し、張られた結界の中で『騎士王』と対話を行う。

「それは……その、あれだ。魔術をな」

「いちおう訊くぞ、それはこの街にかけたのか? それとも──俺にかけたのか?」

「…………」

「おいっ!」

 ころころと笑う『騎士王』。
 だが、『賭博』とのアレコレを経て表情の偽装を看破できるようになった俺にとって、『騎士王』の顔は信用できるものではない。

「あの人たちに、これは報告する。このままだと、俺の自由が減っていきそうだ」

「ま、待ってくれ! このままだと、私の自由が確実に減る!」

「……俺の目印に飛んでくる気か? それだけは、本気で怒るぞ」

「ち、違う! 『生者』をマークにしようとしたことはあるが、それはお前の権能によって無効化され……あっ」

 地元だとカッコイイ王様なのに、どうして異国に来るとこうもポンコツなんだろう。
 演技か、むしろこれが演技なのか? と疑おうとした時期もあるが、残念なことにこれが素なのだと。

「方法に関しては、のちに対策をさせてもらおう。報告に関しては……今、済ませた」

「『生者』ぁぁぁぁぁっ!」

「ははっ、いいザマだ。人の嫌がることは、あまり行わないことをお薦めしよう」

 嘆く『騎士王』のテンションが若干ウザくなってきたので、新作の焼き串を口の中に放り込むことで沈静化させる。
 ふっ、店主と協力して生みだした色物肉の改良品だ……旨いに決まっている。

「モキュモキュ、ほうひへは『へいひゃ』にひってほはへばふぁらなふぃふぉと──」

「ええい、何を言っているのか分からん! ちゃんと食ってから言え!」

「……んん。『生者』、言っておかねばらならないことがあったのだ」

「言っておかなきゃならないこと? ……いや、言わなくてもいい」

 なぜだ! と驚く『騎士王』。
 いやいや、そんなフラグ満載な台詞セリフのどこに受け入れたくなる要素があったんだよ。
 断言しよう、御免蒙ると。

「『生者』、ハッキリ言おう。すでにさまざまな強者が『生者』を知ろうとしている」

「だから面倒なんだって。俺はその気になれば、いつでも肉体を捨てて逃げられる。自由にさせてもらうぞ」

「……『生者』、中には肉体や精神、魂を縛る権能を持つ者もいる。それらが『生者』にも影響を及ぼすモノかもしれないぞ?」

「いいよ、それならそれで。何者だろうと、俺は俺であり続ける。『騎士王』、お前は俺の味方か? それとも──敵か?」

 返事を訊き、今日は解散となった。
 俺の意思を聞いたことで、何やらやることができたらしい。

 ……揉め事が増えるわけだが、本当にロクなイベントがないな。


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